各社が熱い争奪戦を繰り広げた又吉直樹の小説「火花」の映像化権を手にしたのは、動画配信の黒船こと「Netflix」(ネットフリックス)だった! 9月2日に日本でのサービスを開始する同社が吉本興業とタッグを組んで、2016年に映像化作品を独占配信することとなった。
人気小説の映像化といえば、近年では「ビリギャル」の例が記憶に新しい。映画がヒットすれば原作本も売れるという相乗効果が期待できるのだが、なぜ「火花」では映画化やテレビ局でのドラマ化を選ばず、動画配信サービスを選んだのだろうか。ネット事情に詳しいIT系ライターが解説する。
「日本での有料動画配信はまだメジャーな存在ではありませんが、米国ではDVDレンタル市場を上回る大きなビジネスとなっています。さらにネットフリックスでは自社でドラマも製作しており、それがけっこうなヒット作となっているのです。しかもお金の掛け方が段違いなんですね」
たとえばネットフリックス製作のドラマ「House of Cards」では、最初の26話分になんと1億ドル(約110億円)もの制作費を掛けている。アメリカと日本ではドラマの規模が異なるとはいえ、この金額は驚きだ。しかも当のネットフリックス自体が、実はとんでもない巨大企業なのだという。
「会員数は世界50カ国で6000万人以上を誇り、昨年の売上高は55億ドル(約6600億円)にものぼります。国内最大の日本テレビでさえ売上高は3600億円ほどですから、映像を商売とする会社としていかに巨大なのかがわかります」(前出・IT系ライター)
これだけの資金力があれば、小説の映像化など朝飯前だろう。とはいえ、これから日本に上陸するとあって、日本での映像制作は未経験のはず。ところが、そこにもちゃんとした裏付けがあったのである。前出のITライターが続ける。
「ネットフリックスはオリジナルコンテンツの制作でフジテレビと提携しています。フジテレビには映画製作のノウハウもありますし、吉本興業とも近い関係にあります。『火花』の映像化では吉本所属のタレントを総動員して、映画クオリティの作品を作るんじゃないでしょうか」
ちなみにネットフリックスで独占配信した映像作品は、フジテレビが地上波放映権を持つことになっている。つまり「火花」の映像化はフジテレビが仕掛けたとも言えるわけだ。いずれにせよ、小説の内容を損なうことなく、わくわくするような映像作品に仕上がることを期待したい。
(金田麻有)