広島市内の繁華街にある人気のメイドカフェで火災が発生、6人の死傷者を出す惨事が起きたが、入り組んだ店内で生死の境を分けたのは、「個室」の存在だったという。メイドカフェで行われていた1対1でのオイルマッサージ。さらに、「裏オプション」で過剰サービスの実態も聞こえてくるのだった。
JR広島駅の南西約1.3キロに位置する、広島市中区流川町。「中四国最大の歓楽街」として知られ、約3000軒の飲食店や夜の店などが軒を連ねる。そのネオン街の中心部で火災が発生したのは、10月8日の午後9時45分頃だった。
「店内で焦げ臭いニオイがする‥‥」
飲食店「黒猫メイド魔法カフェ」で働く男性従業員が異変に気づき、2階の受付から狭い通路に出ると、裏口階段付近からモウモウと白い煙が上がってきた。
火災報知機が自動では鳴らなかったため、煙を吸い込まないように床をはいながら、彼は報知機ボタンを押して作動させた。すぐに煙は2階にも立ちこめ、黒煙に変わると、火は瞬く間にベニヤ板の壁や天井に燃え広がっていく。
「火事だ! みんな逃げろ!」
男性従業員や男性客による避難を知らせる声が続く。近隣の飲食店の店主はこう話す。
「従業員の女の子が2階から走って下りてきて、『はよ119番して!』と叫んでいました。2階建の雑居ビルは数分で炎に包まれ、階段から転がり落ちてくる男性客もいました」
店の外では、女性従業員がメイド服のまま近隣の店からバケツに水をくんだり、消火器で消火活動を行っていた。しかし火の勢いは増すばかりで、すでに消し止められる段階ではなかった。
「3回ほど大きな爆発音が鳴り、繁華街にも煙が広がっていきました」(火事を目撃した男性)
ヤジ馬でごった返す中、道端ではメイド女性がヤケドを負い横たわる同僚を毛布にくるんで介抱したり、ぐったりとして倒れている男性客に向かって、「起きて! 起きて!」という悲鳴にも似た叫び声を上げていた。
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図の現場に消防車が到着すると、駆けつけた消防隊員に、
「店の中にまだ女の子やお客さんがいるんです! はよ助けて!」
顔はススで真っ黒になり、髪の毛もチリチリになったメイド女性がこう助けを求める姿が見られたという。それでも道路に面した建物側には窓がなく、消火活動は難航した。鎮火したのは、約9時間後の午前6時30分。この雑居ビルを含む2棟が全焼。3棟の一部にも延焼し、計約600平方メートルを焼いた。
出火当時の店には、従業員12人と客10人が店内にいた。うち3人が重軽傷を負い、男性2人と女性1人が命を落とした。
「部屋の構造が入り組んでいて、火事に気がつくのが遅れたようです。被害にあった方は2階の東側にある中央の部屋にいたと見られています。現場検証を行い、ビル1階の南西側階段付近を出火元とほぼ特定。階段下のごみ置き場付近の燃え方が激しく、廃油の入った缶や段ボールが置かれていた。広島県警は不審火の可能性もあると見て出火原因を調べています」(社会部記者)
現在、不審者の情報はないが、失火と放火の両面で捜査を進めているという。