ある有名DJによれば、14歳あたりから20歳前後までに出会う音楽が、その人の生涯の音楽として脳内に刻まれるという。その年代に好きになって繰り返し聴いた音楽は、たとえその人が中高年なってからも、聴けば気持ちが癒されたり前向きになれる貴重なアイテムになるのだとか。
ところが近年は、ごく一部のアイドルを除いてCDがまったく売れないのが実情。1曲ごとにダウンロードして聴くユーザーが増えたとはいえ、「今年の代表曲は?」と聞かれてもすぐに答えられない、音楽にとっては冬の時代だ。
それでは寂しいとばかりに、もっともアルバムCDが売れていた1990年代に青春時代を過ごした現在30代の女性はどんな音楽が好きだったのか、音楽ライターが企画用にネットでアンケートを取った。お題は「これまでの人生で一番聴いた邦楽アルバムは何ですか?」というもの。
「90年代は年間アルバムチャートの20位までがすべて100万枚を超える年もあったほどの音楽バブルでしたから、有名アーティストがライバルたちに負けるものかと毎年のようにオリジナルアルバムを作りました。いま考えれば贅沢な時代でしたね。アンケートは簡単なようですが、実は『一番聴いた』というのは難問で、さすがに回答がバラけました。まだ集計途中ですが、そんな中でも2枚のアルバムは断トツで票が多かった。1位が浜崎あゆみ『A Song for XX』、2位が宇多田ひかる『First Love』です。偶然ですがどちらも99年の作品。前者は浜崎の最大のヒット作ではありませんが、ティーンたちのバイブルになった1枚。後者はご存知、邦楽史上に輝く“最も売れた”アルバム(736万枚)です」(音楽ライター)
浜崎の「A Song~」には、当時10代だった女性たちの「歌詞に感動した」という声が多かったようで、あゆの感性がみごとにリスナーと一致したことが伺われる。一方、宇多田の「First~」は「日本人とは思えない音楽性」という意見があるように、そのサウンドや歌唱力に魅了された人たちが毎日のように聴きまくったのだろう。
「その他、複数の票を集めた上位のアルバムとして、GLAY『REVIW~BEST OF GLAY』、DREAMS COME TRUE『The Swinging Star』、Mr.Children『Atomic Heart』、スピッツ『ハチミツ』、竹内まりあ『Impressions』などが挙がっていました。また、たとえ1票だけでも、そのアルバムに対する思いを熱く書いてきた女性もいましたし、“自分の音楽”は人それぞれ違って当然。中には『邦楽は嫌い、ボン・ジョビとクイーンしか聴いていない』という女性もいましたよ(笑)。でも最近の音楽業界衰退を見ていると、こういった話もいずれ出来なくなるのかなという寂しい気持ちがします」(前出・音楽ライター)
音楽を聴くアイテムは常に進化中だが、肝心な音楽に元気がないのはこれ如何に。アーティストたちには“生涯の友”となる優れた音楽をこれからも提供してほしいものだ。
(野口せいじ)