一度は引退宣言をした橋下徹大阪市長。任期満了に伴う大阪府知事・市長のW選挙の選挙戦での応援はまるで「自分の選挙」のごとき熱の入れようだった。このまま身を引くのか、それとも政界復帰か──去就を明らかにしない橋下氏にベタ張り密着、その真意を直撃し本音を聞くことに成功した!
「うるせぇぞ、ボケ!」
「頑張ってやぁ」
11月22日に投開票が行われる大阪府知事・市長のW選挙。橋下徹大阪市長(46)は候補者のため各地で連日、応援演説をしている。聴衆から罵声や応援が入り混じる理由は、氏の迷走した政治経歴にあるのだろう。
タレント弁護士だった橋下氏は08年2月、「2万%(出馬は)ない」と言いながら大阪府知事選に挑戦し当選。10年4月地域政党「大阪維新の会」を結党し、代表に就任した。
府の財政赤字を黒字化したことなどで、維新ブームが巻き起こると、11年12月には、大阪都構想実現のために自身は市長選に鞍替え出馬。盟友の松井一郎氏を府知事候補に据えてW当選を果たす。12年9月には国会議員を加え、国政政党「日本維新の会」を発足させ、中央政界への足がかりを作ったのだった。
しかし、同年11月に石原慎太郎氏(83)率いる「太陽の党」と合流したあたりから転落が始まる。結党直後の衆議院総選挙では54議席を獲得し第3党にまで上り詰めたものの、東の国会議員団と西の議員団の間で亀裂が生じ、14年7月に分党。さらに9月には「結いの党」と合併するが、政党名で揉めるなど立ち上げから暗雲が漂った。ようやく「維新の党」となり、迎えた今年5月17日、橋下氏は悲願の大阪都構想の住民投票に挑むが、自民党の協力を得られず敗北。選挙前から「負けたら政界引退」と語っていた橋下氏は、開票後の記者会見で「国民の奴隷ではありません。僕は今後、自分の人生を歩んでいきたい」と笑顔で政界引退を宣言したのだ。ところが10月、今度は党を割り、「おおさか維新の会」を設立したのである。
そして任期満了で行われるのが、11月22日に投開票される今回のW選挙である。政治評論家の浅川博忠氏が橋下氏に対する有権者の複雑な心情を語る。
「大阪の有権者は、かつて横山ノックさんや西川きよしさんなど在野人に頼り失敗した。しかし橋下さんは政治に精通しており、大阪復活への起爆剤となる条件を持つと考えている人が多いのです」
今回の応援でも橋下節は健在。対立する自民党推薦の府知事候補・栗原貴子氏に対してはトレードマークの赤服をネタにして、
「共産党の候補者だと思ってますよ」
とやじり倒せば、自民党推薦の市長候補・柳本顕氏に対しては「紳士」とホメ殺しつつ、
「『ふにゃぎもとさん』と呼んでいるんですよ。ふにゃふにゃ小難しいことを言って結論を言わない」
柳本氏に感想を直撃すると、
「同じ土台に立ちたくないので相手にしません」
と「歯牙にもかけない」姿勢を強調したものだった。