今回の応援演説で橋下氏は、数々の悪政で大阪経済をどん底に叩き落としたのは自民党であると猛批判を繰り返している。都構想敗北の恨みをぶつけながら、みずからを「政界のロケット男」と称し、
「改革をするためには自分がミサイルになって、どっかんどっかんやるしかなかった」
と各方面でケンカを繰り返しながらも、多くの改革を行った自身の政治活動をしきりに自賛するのだ。ある官邸関係者が、現在の選挙結果を予測する。
「内閣情報調査室の票読みでは1勝1敗が濃厚のようです。知事選は維新で、市長は自民が取る」
政治評論家・浅川博忠氏の予想も同じものである。
「大方の予想は1勝1敗。市長選は負けるだろうと。橋下さんとしてはどうしても2つ勝ちたい。だから演説にも数多く入っているのでしょう」
対する自民党は総力戦の構え。地方に強い石破茂国務大臣、ポスト安倍と呼ばれる稲田朋美政調会長ばかりか、谷垣禎一幹事長まで大阪に送り込んでいるのだ。
橋下氏は「自身の役目は終わり、吉村候補者が後継する」と繰り返す。1日の演説は最大8回に及び、市内を飛び回るほどの熱の入れようだ。橋下氏に対して、松井一郎府知事は、
「また帰ってきてほしい」
と公の場でラブコールを送るが、こうした声だけが、橋下氏のやる気を後押ししている理由ではないようだ。今回の選挙は「自身の選挙」でもあると、前出・浅川氏が解説する。
「2つ勝つことで、『おおさか維新の会』を中央政界で確たるものにすると同時に、場合によってはみずから中央政界入りも狙う。今回の選挙は中央政界入りするための布石ですね」
すでに永田町では「橋下氏が言った『政界引退』は、実は『市長を引退する』という意味だった」とさえ言われ、今回のW選挙こそ、自身の政治生命を賭けた死闘だという。
「橋下氏には『2万%ない』と言いながら大阪府知事選に出た“前科”があり、だまされてはいけない。今回の選挙は彼に残された唯一の道。都構想が否定された中でどれだけの票が取れるかが今後の大きな指針となる」(前出・官邸関係者)
事実、11月12日、街頭での応援演説を終えて次の移動先に急ぐ橋下氏に記者が「政界復帰への考え」を問いかけた。すると、橋下氏は満面の笑顔で、思わずこう本音を漏らすのだった。
「まだ考え中!」
引退会見で、
「以降は政治家はやりません」
とまで言い放ったトーンと、真逆のものである。はたして橋下氏は今回の選挙結果から、どのような形で中央政界進出するのだろうか──。