翻訳家であり作家、そしてハードボイルド小説研究の第一人者であった小鷹信光氏が8日午前8時45分、すい臓がんで死去したことがわかった。
小鷹氏はダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーなど、数多くの海外ハードボイルドの名作を翻訳したことで知られているが、もうひとつ、忘れてはいけない重要なタイトルがある。
「小鷹さんといえば、僕らの世代は松田優作主演のTVシリーズ『探偵物語』ですね。作品の原案を担当されて、ノベライズ版も2冊、さらに放送後に『新・探偵物語』という小説を2冊手がけられています」(中堅ライター)
ハードボイルドという「男の世界」を追求した小鷹氏だが、もう一方の「男の世界」を手がけていることは意外に語られる機会がないという。
「セクシー小説『フランス書院』は、元々翻訳ものをメインに展開していました。その中でも特に売れたトー・クン『女教師』は小鷹氏の手による翻訳なんです」(前出・ライター)
実は手がけたのは翻訳だけではない。小鷹氏は、フランス書院で外人のペンネームを使っていくつかオリジナルのセクシー小説も執筆していたことを、自著で明らかにしている。
「男と女の関係」もまた、ハードボイルドの魅力のひとつ。男の下半身を固くした珠玉の筆致もまた、改めて語り継いでいくべきではないだろうか。