今年の新語・流行語大賞トップ10に選ばれた「まいにち、修造!」。あの熱血テニス男の語録が添えられた日めくりカレンダーだが、個性派タレントが便乗する「二匹目の修造」が意外な人気を呼んでいて‥‥。
昨年9月に発売され、累計65万部を突破したのが「まいにち、修造!」(PHP研究所)。〈打ち上げてごらん! 心の花火を!〉〈君は本気か! 僕は本気だ!〉など、31の松岡流応援メッセージが書かれているものだ。芸能ジャーナリストの佐々木博之氏が話す。
「この大ヒットを受け、今年3月にはお笑いコンビ『ノンスタイル』の井上裕介(35)が『まいにち、ポジティブ』(ヨシモトブックス)を発売し、意外にも話題を呼びました。その半年後には自虐ネタ芸人のヒロシ(43)が『まいにち、ネガティブ』(自由国民社)を出した。松岡氏と真逆のネガティブ語録が受け、こちらも7万部を突破しているそうです。そして12月、漫画家でタレントの蛭子能収(68)が独特な自然体の31の言葉を添えた『まいにち、蛭子さん』(パルコ出版)を発売。三人三様にクスッと笑えて、癒やしカレンダーという趣が人気の秘密だと思います」
いずれも「あからさまな」類似タイトルだが、蛭子は発売記念サイン会で「たぶんパクリですね。そうとしか考えられない」と話して笑いを取っている。
ヒロシのカレンダーをめくると、松岡語録を引用しながらネガティブに反論。
〈「苦しいときほど笑え!」笑えるぐらいなら、とっくに笑っています〉
その横の解説には、
〈無理なポジティブ・シンキングなんて、そのぶん苦しさが増すだけです。そのときなりに、自然に生きればいいと思っています〉
ネガティブ教訓は続き、〈久しぶりの友だちからの電話は‥‥疑え!〉〈ピンチはピンチでしかない〉など、実体験に基づき、地味な日常生活のよさを説く。
一方、68年間の人生を振り返りつつ「生きるのが楽になる」ための31の言葉を披露する蛭子がとりわけ気に入っている「格言」は、
〈空気を読んでそんなにいいことあります?〉
だという。本人の解説を聞いてみよう。
「よくテレビ番組に出ていても、『空気を読んで』と周りから言われますが、正直に話すことが悪いことかなぁ。みんながみんな、正直に言えればいいと思うんですけどね。人生の中でもそのほうがうまくいったケースが多いと思います。やはり、正直さをバカにしちゃいけないですよ(笑)」
他におもしろいものとしては、〈自分を低い位置に置いていれば、批判されても怖くないですよ〉。この真意は、自分は誰からも批判されて当然な人間なんだと思えば批判されても傷つかず、人の言葉も「なるほど」と受け止められることだという。プライドが高すぎると苦しいことばかりだと示唆しているのだ。
〈予測してもしょうがないものは予測しなくていいです〉
この脱力感あふれる言葉も、将来の予測なんて当たる時は当たるし、外れる時は外れる、というクールな思考ゆえ。考えてもどうにもならないことをうじうじ考えるのはよくないのだ。
異色のスタイルを取っているのは、出川哲朗(50)の「エブリデイ出川語録」(日本テレビサービス)。前出・佐々木氏が苦笑する。
「これは出演番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)とのタイアップ商品というテイで、日めくりブームに乗った、これこそが便乗商品でしょう。番組内の出川イングリッシュの迷言が中心で、リアクション名場面が添えられ、アイドルのダイアリー風のミニ写真集に似ています。ひととおり見ると飽きてしまいそうですね。ただ、4人それぞれに自分を確立しているだけあり、妙に核心を突き、うなずける反面、ツッコミも入れたくなる。どれがいいかなんて考えず、癒やしの日めくりとして見れば、朝から楽しめるのではないでしょうか」
人生訓の一つに、ぜひ。