フィギュアスケートの世界選手権で浅田真央(21)が、まさかの6位。表彰台を逃した。代名詞のトリプルアクセル(3A)が不発に終わるばかりか、今季ワースト得点。いったい何が起きているのか。
「何でなのかな」
3月31日(現地時間4月1日)のフリー演技後、茫然とする浅田。会場の仏・ニース入りしてから練習、本番と3Aに56回挑戦し、成功なし。自慢の華麗なジャンプでもミスを連発した。現地入りした記者が話す。
「後半の3-2-2回転のコンビネーションが単発の2回転になり、3回転ループも1回転と、ボロボロでした」
3位の鈴木明子(27)ばかりか、5位の村上佳菜子(17)にも10点差以上の大差を喫する。4月19日から日本で開催される世界国別対抗戦への出場もかなわず、浅田の今シーズンはあっけなく終わった。スポーツ紙デスクが解説する。
「浅田は、選考基準の世界ランク、さらには世界選手権の成績でも村上を下回ったために選出されませんでした。この大会は、14年のソチ五輪で正式採用される団体戦の前哨戦。それだけにフィギュア協会関係者は『世界選手権前に(浅田が)リズムを乱しているとは聞いていたが..』と落胆してました」
実は、現地の練習を見た協会関係者から「表彰台は難しいだろう」という声が聞かれていたという。前出の記者が明かす。
「真央ちゃんはショートプログラムまでに練習で41回も3Aに挑んでいたんですが、スピード感に欠けていた。『母親の闘病と死去による心労で5キロ近くまで落ちた』と言われる体重が、まだ戻ってきていないからという見立てでした。かつて“氷上の天使”と呼ばれていた頃は、抜群の瞬発力でフワァと浮き上がるように宙を舞っていたのに、今は助走を長めに取ることで失ったパワーをカバーしているように映る。そのためジャンプに重要な、踏み切りのタイミングにも微妙に影響し、精度を乱していたんです」
ソチ五輪まで、あと2年はあるとはいえ、深刻な状況に直面していたことは間違いないようだ。スポーツライターが話す。
「今回の大惨敗を見て、亡くなられた母・匡子さんの言葉が思い出されました。昨年の春、『15歳から世界で戦い続け、体も心も金属疲労のような状態で、どこかでケアする時間が必要かもしれない』と、話していたんですよ。休むなら安藤美姫のように今シーズンだったはず。しかし、ベスト体重に戻せぬまま、周囲の期待を背負い、"使命感"から3Aと格闘し続けてるようで、不安が募ります」
ただ、フィギュアスケート解説者の佐野稔氏は、そんな心配事を一笑に付す。
「彼女も周囲も決して言い訳しないけど、(母親が死去し)練習ができなかったこともあったと思います。そういう中でも死去から2週後の全日本選手権を制した時はメンタリティが強いなと思いましたが、同時に世界選手権の切符を手にし、ふと我に返り寂しさが込み上げてくることもあったと思う。まだ、21歳ですよ。たぶん、寝る前に悲しみも襲ってきたんじゃないかな」
さらに、今回の演技からも浅田の成長は明らかだという。佐野氏が続ける。
「見ていても、4分間のプログラムの流れは悪くない。スピン、ステップは全てレベル4と、スケーティングは着実に向上しているように見えます。佐藤(信夫)先生について2年目、ソチ五輪を見据え、きっちりと計算された状況でしょう」
浅田の今季最終戦の視聴率は、なでしこジャパン級の14%オーバー。真央ちゃん人気は健在だ。来シーズンこそ3Aをきっちりと決めてくれると期待したい。