テリー そもそもモデルだった高野さんが、どうしてボクシングを始めたの?
高野 22歳の時にモデルの友達に誘われて、試合を観に行ったのがきっかけですね。15歳の時からやっていたキックボクシングはただの趣味で、プロになるつもりも、試合を観に行ったことも一度もなかったんですけど。
テリー へぇ、そんなにすごい試合だったんだ?
高野 というか、リング上で戦っている選手がピュアに見えたんですよね。山上ボクシングジムの天笠尚選手の試合だったんですけど、すごくカッコよくて、衝撃を受けて。「私もあんなふうになりたい!」って次の日に山上ボクシングジムに入門しました。
テリー そりゃ行動が早いな(笑)。高野さんみたいな美人が来たら、ジムは大喜びだったでしょう。
高野 いや、男性しかいないジムですから、最初は相手にもされませんでした。
テリー ボクササイズみたいな気分で来たと思われたのかな?
高野 恐らく(笑)。会長には「どうせ1週間ぐらいですぐに来なくなるから」って言われてたのが悔しくて、毎日片道1時間半かけて通ってました。
テリー なるほど。そしたら「おっ、こいつ、意外と頑張るな」と認めてくれたんだ。
高野 でしょうね。行けない時があると、ジムから「どうしたんだ、やめたのか?」って連絡が来るようになって(笑)。そうやって、少しずつ認めてもらった感じです。
テリー それで約3年前にライセンスを取ってプロになったと。実際リングに上がってみて、どうだった?
高野 無我夢中だったから覚えてないですけど、「女なんかやめろ!」みたいなヤジは多かったですね。何か遊び半分にやってるように見えたみたいで。
テリー ああ、高野さんの場合はモデルという肩書があるから、よけいにそう思われたのかもしれないね。
高野 お客さんには、選手が試合までにどれだけの努力をしたかは見えないですからね。もちろん選手も、自分から「こんなに努力しました」とは言わないし。
テリー そりゃそうだ。
高野 だから、試合で結果を出せなければ、ヤジられてもしかたないとは思っています。
テリー 俺が高野さんを知ったのも“モデル兼プロボクサー”という肩書があったからこそなんだけれども、そんな感じでボクシングの実力とは違うところで注目されると、困ることも多かったんじゃないの? 相手も、いつもより気合いを入れてくるだろうし。
高野 その点、ジムは気にしていたかもしれないけど、私は気にならなかったですね。周りの状況とか対戦相手はあんまり関係なくて、今自分ができることを一生懸命やろうといつも思ってましたから。あと、相手がやる気になってくれるのは、いいことですし。
テリー 俺、前から不思議に思ってるんですけど、ボクシングって嫌いでもない相手を殴るじゃないですか? あれって平気なもんなんですか?
高野 いえ、殴れないものですよ(笑)。
テリー あ、やっぱりそうか! ゴングが鳴ったからって、嫌いでもないヤツをいきなり殴れないよな。
高野 そうですよ。ジムの人って「相手を殺すつもりで行け!」とか言うんですけど、そんな簡単に「殺せ」って‥‥。
テリー さっきまで握手してたのにな。
高野 そうそう! そういう闘争心というか心の切り替えができないところが、自分に足りない部分だと理解してはいるんですが。