北朝鮮とミャンマーの関係をひもとくには、2つの鍵があった。その1つがある非合法なブツの製造だという。海外の闇事業に詳しい、チャイニーズマフィア関係者のX氏が語る。
「北朝鮮は国家事業として、覚醒剤をはじめとした非合法な薬物を諸外国に売ることで外貨を稼いできた。でも、原料の大麻やアヘンは寒い国内では自生しにくいからな。北の上層部は原料の代替先を求めていたんだよ。それで白羽の矢が立ったのがミャンマー。15年ほど前なんか、当時はまだ後継者候補だと思われていた金正男(44)が、じきじきに大量買い付けに行くほど、おおっぴらだったな」
麻薬、覚醒剤の密造地域としてはアフガニスタンやパキスタンなども有名だが、北朝鮮が闇事業のパートナーにミャンマーを選んだのには理由があった。
「ミャンマーは、空港や港を麻薬王が経営してるんだよ。だから、簡単に違法薬物を輸出することができる。頼めば飛行機の座席まで運んできてくれるサービスまであったそうだ。国策でやっている北朝鮮なら、持ち出した麻薬の原料を自国内に入れることも容易だから」(X氏)
もちろん、ミャンマー政府も麻薬撲滅に躍起になっている。昨年7月には、ヤンゴンで約2670万錠の覚醒剤を警察当局が押収。同国での一度の押収量としては過去最大であり、その末端価格は100億円は下らない。国家としての本気度がうかがえる。が、X氏はこの動きを一蹴するのだ。
「今、ミャンマーでは賄賂をもらって覚醒剤ビジネスに協力した人間を逮捕すると言っているけど、今も一部の軍人は日本円で3000万円もする高級車を乗り回せるほど賄賂で潤っている。国が民主化したと言ったって、警察官は地位では軍人のはるか下で、軍人の機嫌を損ねれば簡単にクビにされてしまうような社会だ。おまけに、喜び組の女たちがカラオケ店で政府高官とつながるような諜報活動までしているんだからな」
さらに北朝鮮にとって好都合な点がある。同国の物価の安さだ。X氏が続ける。
「今、物価が上がってはいるけど、国家公務員の月給が日本円で7000円程度。俺も以前、現地に行って実感したけど、『ホテルに持ってきて』のひと言で、おちょこに山盛りの覚醒剤が簡単に手に入って、50円ぐらいだったよ」
原料となれば、さらに安く購入できる。ミャンマーの暗部と手を結んだ北朝鮮はそれを輸入し加工することで、世界中に顧客を作って売りさばいてきた。もちろんターゲットとしては日本も例外ではない。