話を続けるX氏がさらに衝撃的な実態を口にした。
「あの『ラングーン事件』で北朝鮮とミャンマーの国交が断絶していたよな。だけど、この間も内密に軍事同盟を結んでいたって。この2カ国の関係に隠されたもう1つの鍵は原爆を共同開発していたことなんだよ」
ラングーン事件とは、83年、当時ビルマと呼ばれたミャンマーのラングーン(ヤンゴンの旧称)で起きた北朝鮮工作員による韓国大統領暗殺未遂事件。この事件により両国の国交回復まで24年もの歳月を要したとされているほどだが、そんな“敵対関係”の中で大量殺戮兵器の共同開発をしていたのだと、にわかには信じがたいことを語るのだ。
その核心を知るという、外務省関係者が口を開く。
「15年ほど前、ロシア、ウクライナ、ミャンマー、そして北朝鮮。4カ国の科学者がミャンマー国内の山奥で原爆の共同開発をしていたんです。アメリカの衛星にも察知されないような山奥で。そこから北朝鮮は『イエローケーキ』という原爆製造工程途中の産物を海路で自国に持ち帰っている」
イエローケーキとはウラン鉱石の精製過程で生み出される純度の高い粉末である。主に原子炉用のウラン燃料製造に用いられるが、精製濃縮処理を繰り返すことで核兵器製造に応用可能となる危険物質だ。当時は軍事政権下にあったミャンマーは北朝鮮と共同で核兵器所持を目指したのか。たとえそうだとしても、ミャンマーの民主化活動家にとっては見過ごせない事態だった。
「スパイとして工場に潜入していた活動家が決死の覚悟でイエローケーキを新聞紙に包みアメリカ大使館に持っていったんです。その活動家は、のちに被曝して死んでしまったのですが、その勇気ある行動によって北朝鮮が原爆を作れることが露見しました」(前出・外務省関係者)
北朝鮮とミャンマーの裏面史は、かくも闇に包まれていたというのか──。
その後、北朝鮮は06年10月9日に初の核実験を行い、4度目である1月6日には原爆の数百倍の威力を誇るとされる“水爆”実験に成功したと喧伝するに至った。金正恩第一書記(33)のもくろみを五味氏が分析する。
「背景には、5月の党大会の存在があると思います。過去の党大会は長期経済計画発表や国家人事といった未来を感じさせるものだった。今回は36年ぶりにもかかわらず、バラ色の未来図を示すことができないのでしょう。そこで『国の外には敵がたくさんいるぞ』と国民の意識を引き締める目的で行ったのではないでしょうか」
一方で、1月7日には北朝鮮が12年までの核兵器開発に費やした金額が国内の食糧代の1年半にも及ぶと韓国で報じられた。この金額には13年の3度目と今回の“水爆実験”の費用は含まれていない。
「ここ2~3年、住民を喜ばせるために、プールや遊園地といった娯楽施設を建設したため外貨が不足している。おまけに、地方にもパソコンが普及し、国民が情報を得やすくなった。金第一書記は住民を喜ばせないと自分の身が危ないと考えているのでしょう。閉鎖社会の北朝鮮では大規模に外貨を稼げないため、海外にいる同胞に頼むしかないのです」(五味氏)
異国で喜び組がせっせと諜報活動に励む中で、体制の終焉は刻一刻と近づいているのか。