近年、競馬ファンの間で馬場の変化が話題を呼んでいる。特に芝コースの変貌は著しく、馬券予想で戸惑う声が聞かれるほどだ。そこで11年ぶりにコース解析本「コースの鬼!」の最新版を上梓した城崎哲氏に、馬券的中に直結する“新常識”を解説してもらった。
「JRAの芝コースは、ここ数年でものすごく変わりました。芝が変わり、管理方法が変わり、路盤が変わった。それによって時計(走破タイム)が変わり、有利な脚質が変わり、勝ち馬が変わりました」
コース分析の第一人者・城崎哲氏が昨年末に第3弾となる「コースの鬼!」(ガイドワークス)を上梓。JRA全107コースの最新傾向が掲載されたこのシリーズは“伝説のコース解析本”として数多くのファンに知られている。
「近年、コース傾向が激変したことで、私が20年近く馬場を見続けて得た知識の大半がスクラップ化してしまいましたね(苦笑)。最近の芝は競馬場によっては開催が進んでも傷まない。この急激な変化をもたらした原動力がエクイターフ。JRAが06年に品種登録した野芝の新品種です」
全国から採取した芝の中から20年以上かけて選別、育種し、耐久性に優れた芝が誕生した。現在、福島と小倉で多く使われ、東京や中山、中京でも消耗度の高い個所を中心に置き換えられている。
「当初、このエクイターフが普及すると、芝のレースがますます高速化すると思われていました。でも実際は逆でした。最高強度の芝を手にしたことで、次のステージに移れたんです。JRAの馬場造園課は、ずっと芝コース(路盤)を柔らかくしたいと思っていた。それこそ20年来の悲願とも言えます。世界的に見ても、馬主や生産者など、馬を走らせる側の多くが、馬場の柔らかさが安全性につながると考えているからです」
JRAは馬場硬度をG(重力加速度)で表すが、10年前は100G超だったものが、現在は80Gぐらいまで柔らかくなり、競馬発祥地の英国と、ほぼ同じレベルに並んだという。
「路盤を柔らかくする機械の1つ、バーチドレンは15年以上も前から使われていました。ただ、単独で使っても馬場硬度の変化にはあまり結び付かなかった。そこにシャタリングマシンが登場します。09年に東京で初めて使われ、11年に新潟と京都、12年に中山、13年には全場で使用されています。また、バーチドレンと組み合わせて使うと非常に効果があり、現在はほとんどの競馬場で開催前にバーチドレンが入れられる。JRAのHPには『エアレーション作業を行った』と記載されます」
馬場硬度の変化は、当然ながらレースにも影響が及ぶ。13年夏の新潟では、前年に比べて時計が1秒強も遅くなったものだ。