佐渡ヶ嶽部屋関係者も言う。
「琴奨菊はメンタル面が弱いため、写経をして心を整えることを心がけていました。今は心が波立ちそうになったら、深呼吸をするそうです。最後の仕切りのあとに左手で塩をつかみ、上体をフィギュアスケートのイナバウアーのように大きく反らしているのがそれ」
いわゆる「キクバウアー」と呼ばれる、あの独特のポーズである。この部屋関係者が続ける。
「平幕時代は、得意技のがぶり寄りとブログをミックスさせたタイトルの公式ブログ『がぶろぐ』をやめていましたが、大関昇進を機に再開。今は相撲に対しても自然体で臨んでいる。それがいい結果を生んだのではないか」
何にでも前向きな琴奨菊は最近、ハンマー投げの練習を稽古に取り入れた。
「小さな円の中であれだけの力が出しきれるのは、相撲に通じるところがある」
そう言って毎日、朝稽古が終わると、午後はハンマー投げに打ち込んでいるのだ。
昨年7月、琴奨菊は元OLの石田祐未さん(28)と結婚した。
「毎日、祐未夫人の手料理で夕食をとる。彼女は琴奨菊の体を気遣って、玄米、五穀米を炊くそうです。琴奨菊はまったくの下戸で、以前、奈良漬を数本食べただけで泥酔し、記憶が飛んでしまった経験がある。祐未夫人は、それを踏まえて食事作りをしているそうです。12年には一般女性と交際して婚約発表、挙式の予定まで告知しましたが、破談になった過去がある。そういうつらい時期もありましたが、今は全てがプラスに動いています。それが好調の原因なのではないですか」(相撲関係者)
13年の九州場所2日目には小結・松鳳山との一番で右大胸筋断裂を負った。後半戦、全治3カ月の見込みとの診断書を提出して休場に追い込まれたことも。
「この時はケガの影響で呼吸困難になるほどでしたが、精神安定剤を飲んで勝ち越した。ところが薬の中身はなんと、ラムネだったという事実が判明したんです。実は琴奨菊は閉所恐怖症でMRI検査で機器の中に入れないほどでしてね。大ケガした時もMRIに入れない小心者ぶりだった。ケガが悪化するんじゃないかと、みんな心配しましたよ。それが新妻を得たとたんに強くなり、エンジン全開といったところですよ」(前出・佐渡ヶ嶽部屋関係者)
連続優勝かそれに近い成績を残すと横綱の声がかかるのは当然のこと。頂点に立つ可能性はどうなのか。NHKエグゼクティブアナウンサー・杉山邦博氏はこう評する。
「満身創痍の状態ですからね。連続優勝は厳しい道のりでしょう。しかもモンゴルの分厚い壁が立ちはだかっている。しかし、もし実現すれば、すごい相撲人気になるでしょう」
18年ぶりの日本出身横綱への期待に沸く角界。
「押し相撲は調子相撲。だからこんな奇跡も起こる。要するに、2場所連続がないとは言えないんですよ」
前出の佐渡ヶ嶽部屋関係者がそう言うように、遅咲きの悲願達成も夢物語ではない‥‥。