その相手こそロシアの「皇帝」プーチン大統領(64)。しかし、プーチン氏は、トランプ氏の勝利宣言後、こう祝電を送っている。
〈ロシアは全面的に米国との関係を復活させる用意があるし、それを望んでいる〉
クリミア問題以降、オバマ政権とは修復不能なほど関係が冷え込んでいたロシア。これは雪解けのメッセージかと思いきや、「宣戦布告」を意味するという。
「『古きよきアメリカの復活』をトランプ氏が打ち出している以上、目指しているのは冷戦構造時の『強いアメリカ』。プーチン大統領が『歓迎する』と言ったのは、冷戦のゲームができる相手としてトランプ氏を認めたということです」(渡邉氏)
確かにプーチン大統領は、
「尊敬する指導者はピョートル大帝」
と公言しているが、そのピョートル大帝こそロシアの侵略と征服の象徴だ。対するアメリカの新たな「皇帝」となったトランプ氏は、
「私はアメリカをもう一度偉大な国にしたい。私にはそれができる!」
と豪語し、一歩も引かない姿勢である。核ボタンに手をかけながら拡大路線を目指す、超大国タカ派トップの2人の対立は、1945年から89年まで続いた米ソによる東西冷戦構造と同じもの。はたして日本はどうなるのか──。
選挙時には、在日米軍撤退を訴えていたトランプ氏だが、当選後の10日、在日米軍のトップ・マルティネス司令官は記者会見で、「日米同盟の信頼関係は変わらない」と明言している。
現在の中国は、南シナ海の南部に位置する南沙諸島を実効支配。また日本から尖閣諸島を奪おうと虎視眈々と狙っている状況だ。
「トランプ氏が大統領になったことで、南沙・尖閣問題の解決に向けて動きだすことは間違いありません。トランプ氏にとっても、プーチン大統領にとっても、中国の大国化を喜んでいないので、国際社会から存在感を消す方向で動くでしょう。その過程では日本も含めた西側陣営と、引くに引けない中国との緊張関係は一時的に臨界状態になると思います」(前出・渡邉氏)
3月には、アメリカのインタビューで過激派組織ISに対して、戦術核兵器を使う可能性について言及したトランプ氏。また集会では、北朝鮮に対抗するため、日本の核保有を容認する発言もしている。前出・渡邉氏はこう話す。
「平和というのは力のバランスが統一された時か、絶対的な支配者がいる時にしか存在しません。無防備な国家が侵略されるのは、世界の歴史が証明しています。トランプ氏は崩れつつある世界秩序の構造を、再構築しようとしているのだと思います」
はたして新大統領は、世界を古くて新しいステージに引き戻すのか、それとも「破壊」するのか──今後の展開から目が離せない状態だ。