中東の大地には連日ミサイルや爆弾が降り注ぎ、欧米では報復テロにより多くの市民が犠牲となっている。中国の人工島の周辺ではアメリカが軍事作戦を展開、朝鮮半島では核実験が行われた。そう、世界構造は激変したのだ。人知れず開戦した「第3次世界大戦」、日本列島はすでに戦時体制に突入している‥‥。
「世界はすでに戦時体制下に置かれている」
日本のメディア報道を見ていると、これに気づいていない人が多いと言えよう。
ここ2年、頻発した世界の安全保障体制を揺るがす事件を列挙しよう。
14年2月欧州で「ウクライナ危機」が勃発。NATO体制が復活して、再構築が行われようとしている。対国家ではないものの、「IS」(イスラム国)に対して中東では空爆が行われている。軍事アクションを起こしているのは、第1.2次大戦のキープレイヤーとなった国である。
15年10月27日には、アメリカが軍事オペレーション「航行の自由作戦」を開始することを発表。同時にフィリピンやインドネシア、NATO諸国もこの作戦に賛同、日本も同様である。アジアにおいては、南シナ海問題を中心に、アメリカが中国と直接的敵対関係を明確にしたことは明らかだ。
2年前、今のような世界の環境が生まれると想像した人はいただろうか。ほぼいなかったに違いない。現在が「平和」であると言えるのだろうか? 決して言えるわけはない。これらの事態へ至る経緯を、過去に遡ってみてみよう。
アメリカを代表とする西側の資本主義・自由主義経済の勝利によって、共産主義は弱体化し、東側体制は消えると、多くの人が思っていただろう。冷戦構造終了後、敵のいなくなったアメリカによる、ワンルールによる世界の統一が行われた。これこそが、「グローバリズム」の実態である。
アメリカが金融資本世界を跋扈して、世界中の富を操ることによって一種の一国支配構造が生まれた。中国にしてもロシアにしても、アメリカという経済体の中に依存し、アメリカ資本を受け入れることによって経済発展をしてきた。そこにおいては、日本もキープレイヤーの一つとして、中国に出資、投資、技術移転などを積極的に行い、中国を中心に新興国を発展させてきた当事者であった。
先進国の経済モデルとは、金融によって新興国からお金を吸い上げ、それをサービス業等に回すことによって、成立していた世界である。多くの日本人は、
「私は新興国からお金をもらっていない」
と言うかもしれないが、実は間接的にほぼすべての日本人が、その恩恵にあずかっている。日本の金融機関が新興国投資を行い、金融機関の金利や配当という形で還付されているからである。年金などを運用し、新興国投資を盛んにしていたことは記憶にあるはずだ。
世界のファンドは新興国に投資を行い、高い利益を得ていた。先進国にとって新興国は、資金を回収する新たな植民地という構造であったと言える。
ところが08年、リーマンショックが起こる。
資金のパイプ・ポンプの役割をしていたのが金融機関だ。その中心地であるアメリカで低所得者向けの住宅ローン─サブプライムローン─が焦げ付き、連動してリーマンブラザースが経営破綻。世界的な株価大暴落を招く。
これ以降、力をつけた新興国が先進国に対して、異を唱え始めたわけである。こうして、世界は再び冷戦構造となる。約25~30年近く、時計の針が巻き戻されたというのが、現在の世界構図と言える。
おおまかな流れを押さえたうえで、中国・北朝鮮の間で戦時体制下に置かれた日本に話を移そう。
(経済評論家:渡邉哲也)