そしてもう一つが、2013年の確定申告から導入された「特定支出控除」だ。この制度は個人事業主だけでなく、サラリーマンにも一定の必要経費を認めようというもので、控除の対象となるのは通勤費、研修費、転居費、資格取得費、勤務必要経費、図書費、衣服費、交際費など。つまり、スーツ代や飲食代をはじめ、ゴルフ代に御中元、御歳暮代、さらには資格を取得するための授業料なども該当するということになる。では会社の金でキャバクラで飲んだとしても、必要経費として認められるというのか。
佐藤氏の解説はこうだ。
「まあ、理屈の上ではそうなりますね。ただ、そのためには、まず勤務先の会社から『仕事に直接必要だった』という証明書をもらう必要があります。例えば飲食代だったら『誰々と職務に関する打ち合わせのために飲食した』と会社に申告してハンコを押してもらい、それを税務署に提出することになります。また、交通費も同様で、残業や接待で終電を逃してしまい、しかたなくタクシーを利用した場合も、同様の手続きが必要になります」
特定支出控除の対象となるもののうち、「勤務必要経費」は衣装代や交通費、飲食代など合わせて65万円までと上限が決められているが、佐藤氏は、「実はこの65万円というところがミソ」なのだという。
「この制度は給与所得控除の半分を超える場合が対象ですから、具体的に言うと、例えば年収500万円のサラリーマンのケースでは、給与所得控除は154万円。で、その半分だから77万円になる。特定支出控除はその77万円を超えた部分に対して認められるので、そう考えると現実的にはちょっとハードルは高いかもしれませんね」
仮に100万円の勤務必要経費を使ったとすると、特定支出控除は77万円を超えた23万円分のみに対して認められることになる。確かに「年収500万円のサラリーマンがそんなに使うか!?」との声も聞こえてきそうだ。
とはいえ、会社にとっては1円の損もないというから、「我こそは!」と思う諸氏はトライすべし。接待ゴルフに接待キャバクラ、取引先への盆暮れの贈り物を欠かさず、資格を取得して取り引きを優位に進めつつ、大きな契約をまとめて会社に多大な利益をもたらす──。腕に自信のあるモーレツなビジネスマンは挑んでみてはどうだろうか。
「たとえ少額であろうと、取り戻せるものはきちんと取り戻す。それができるのが、1年に一度の確定申告です。今の時代だからこそ、サラリーマンには確定申告なんて関係ないと勝手に決めつけず、できるだけ税金に敏感になること。結局はそれが最大の節税対策になるということです」
今年の申告期間は3月15日まで。サラリーマン諸氏も領収書の再チェックをお忘れなく。