「いらん。頼むから切れ!」
怨念渦巻く交流戦を前に、これ以上ない罵倒合戦を繰り広げたのは、昨年限りで楽天を追われて古巣・中日に復帰した山﨑武司(43)と、クビを切った側の星野仙一監督 (65)である。
「仙台でホームランを打つのが夢だ」
世話になった楽天に自分が活躍する姿を見せたい。さらに、自分を追い出した球団から打つことで溜飲を下げたい。この2つの思いが山﨑にはあった。そもそも山﨑は楽天で現役生活を終え、引退するつもりだった。楽天関係者が明かす。
「球団内からは、次期監督として山﨑待望論が出ていました。実際、それが既定路線だった。ところが、退任後もみずからの影響力を残しておきたい星野監督にしてみれば、もともとソリが合わない山﨑に取って代わられるセンは消しておきたい。だから山﨑切りに動いたんですよ」
その方法とは次のようなものだった。楽天関係者が続ける。
「星野監督は山﨑に対し、『頼りにしている』と言いながら、『武司、ちょっと休め』と休養を指示する。で、ウラでは『もう武司は使えない』と言うんです。その二枚舌に、山﨑は不信感を募らせました。星野監督はフロントに『武司はもうダメだ』と、選手としても指導者としても失格だと報告。球団は選手、将来の指導者として残ってほしかったのに、星野監督は頑として受け入れなかった。『どうしてもいらん。頼むから切ってくれ』とまで言って。結局、対外的には球団が山﨑不要と判断した形になり、監督もそう周囲に話していた。それが山﨑の耳に入り、『フザけるな、あのウソつき野郎!』と激怒したんです」
だが、星野監督にも「言い分」があるらしい。一つは、「引退してコーチになれ」という打診を山﨑が断ったこと。さらには、腹心である田淵幸一ヘッドコーチ(65)との衝突である。
股関節や腰に爆弾を抱える山﨑は、試合に出るなら開始時間から逆算して痛み止めを飲んで備えたい。ところが「休め」と言われたと思ったら「出ろ」だったり、起用法が一貫しない。だから出るなら何時間前に言ってくれ、と田淵コーチに訴えた。それを知った星野監督は「一選手の分際で!」と激怒したのだ。
「星野監督は、飼い犬に手をかまれたと思っている。山﨑が中日に移籍する際に中日幹部に電話して、『あんなとんでもないやつを獲ると大変なことになるぞ』と、妨害のごとき警告までしています」(中日関係者)
両者が相まみえたオープン戦で、山﨑は星野監督に挨拶に出向くことはなかった。大罵倒合戦第2ラウンドのゴングは、交流戦の対決で打ち鳴らされる。
追い出される者あれば、来る者あり。昨シーズン途中に阪神から戦力外通告を受けた下柳剛(44)は、楽天に移籍。だが親しい報道陣には、こう漏らしたという。
「セ・リーグでやりたかった。何で俺をクビにしたのかと、(阪神に)思い知らせてやりたかった」
確かにパでは、古巣へのリベンジの場は交流戦期間中に限られる。スポーツ紙デスクが明かす。
「クビ宣告の下柳に最初に声をかけたのは、中日・落合博満前監督(58)。球団の方針で、落合前監督は優勝しても退任という路線でしたが、本人は日本一になればクビは回避できると考えていた。下柳も『お願いします。(中日に)お世話になります』と返事をしていました。ところが髙木守道監督(70)に交代。新監督は『山本昌(46)がいるから(下柳は)いらん』と却下した」
下柳の牙は、中日にも向けられている!?