オーナー命令でリベンジを
遺恨だらけの交流戦で一種変わった因縁を持つのは、江草仁貴(31)との交換トレードで西武に移った嶋重宣(35)と古巣・広島である。主力を張った功労者の放出に、本人もさぞかし憤慨しているかと思えば、さにあらず。前出・スポーツ紙デスクが解説する。
「広島と西武のトレードは昔から『研修』と言われることがある。両者の間には慣習的な取り決めがあり、何年かあとには広島に戻ってくる『奉公』みたいなもので、実質的な期限付きトレードですよ。これは『他球団でメシを食ってこい』という、松田元オーナーの考え方。嶋は西武で活躍するかどうかで、将来が決まる。いずれ広島に戻って現役を終え、指導者になるはずで、嶋はそれを言い含められてトレードに出されています。広島球場では必死にアピールするでしょう。ま、広島のフロントにしても、嶋に打たれても『ようやった』という感じですが(笑)」
さて、再びガチンコ遺恨バトルの現場に戻ろう。
オープン戦の絶好調はどこへやら、最下位街道まっしぐらのDeNA・中畑清監督(58)は、意気込みだけはバリバリ。春田真オーナーと口をそろえて、
「ソフトバンクにはオープン戦でヤラレた。リベンジしたい」
確かにオープン戦ではいいように走られ、惨敗を喫した。DeNAがあれほど好調だった時でさえ、
「12球団で唯一かなわないと思ったのはソフトバンクかな」(春田オーナー)
DeNA担当記者はこう言う。
「だから交流戦でのリベンジは事実上の『オーナー命令』と言っていい。親会社が同じIT系だし、負けられない」
IT系といえば、DeNAが新規参入する際に、あらゆる資料の提出と抗弁で妨害した楽天との遺恨はすさまじい。前出・遊軍記者によれば、
「選手同士は何とも思っていませんが、親会社同士のぶつかり合いは大きい。楽天・三木谷浩史会長は、DeNAがことのほか注目を浴び、プロ野球メディアの話題をさらっている点に納得がいかない。楽天なんてほとんど話題になりませんからね。だから選手たちには『DeNAには絶対に負けるな』と、会長命令を発令してハッパをかけているそうです」
ある意味、現場の選手と首脳陣にとっては実に迷惑な、経営者の意地の張り合いなのである。
その話題の中心たる中畑DeNAだが、対ソフトバンクにせよ、対楽天にせよ、戦力的に苦しいのは衆目の一致するところ。そこでこの先を見据え、
「中畑監督と高田繁GMは、交流戦を補強、トレードの品定めの場とするでしょう」(前出・デスク)
貧打に泣いているだけに、補強必須なのは野手なのか、それともリーグ最下位の防御率で手薄な先発投手陣が欲しいのか。
「いや、中長距離砲として中村紀洋(38)、ラミレス(37)、吉村裕基(27)がいるし、将来の主砲と目される筒香嘉智(20)がいる。石川雄洋(25)や荒波翔(26)といった、機動力を使える若手も台頭してきた。先発投手も、三浦大輔(38)、高崎健太郎(26)、今年ブレイクしそうな国吉佑樹(20)や小杉陽太(26)らが成長株です。やはり優先順位は昨年34セーブ、抑えの山口俊(24)の前を投げる中継ぎでしょう」(前出・デスク)
リベンジに品定めにと、フル回転。成績にかかわらず、交流戦も注目度だけはゼッコーチョーだったり!?