いつしか、話は野村氏が薬物を使用していた頃の話題に変わっていた。
「俺は0.25グラムを1万円で買っていた」
1回当たりの薬物の標準使用量は約0.03グラムとされている。
「注射器使うと容器の半分くらい(水に溶かして)入れるんや。そんな量、1回か2回で使い切ってしまう。清原の量だって注射器使っとったら驚くもんじゃない」
グラムで判断するのは素人と言わんばかりに言葉を続けていく。
「結局は純度や。俺の場合、粗悪品をつかまされとって、いくら入れてもまったく効かんかった。売人に『チップ渡すからもっと効くの持ってこい』と言うたこともある。それでも効かんから『今度はニセ札持ってくるぞ!』と叱りつけたこともあったわ。そいつが何か混ぜとったんやろうな」
野村氏はかたくなに「俺は(覚醒剤で)キマったことはなかった」と語る。が、記者の隣で話を聞いていた旧知の友人が「ホンマに覚えてへんのか」と重い口を開くのだった──。友人が語るのは、06年春の話だ。
「どこから電話番号を聞いたのかわからんかったけど、(野村氏が)急に電話をかけてきていきなり『キャンプで高知に来ている清原先輩に贈り物をしたいから50万円貸してくれ』とか言うんや」
本連載で明らかになったように、野村氏と清原被告の最後の面会は04年秋頃。その後、野村氏は金融ブローカーであり、清原被告のクスリの売人でもあったX氏から10万円の手切れ金を突きつけられている。
「酔っとるかと思って、その日はひとまず電話を切ったんやけど、翌日からまたや。切ったとたんに、また電話をかけてくる。内容も『神戸の自宅の権利書を20万円で買ってくれる人おらんか』や『右翼の知り合いおらんか? 街宣車を使って、清原先輩に呼びかけたいんや』とか。それがひっきりなし。こっちは話についていけず『は? は?』状態」
友人の激白にアゼンとした顔を見せる野村氏。感想を求めると、
「記憶がまったくないわ‥‥。シャブって怖いなぁ」
と、10年前の空白の時間におののくのが精いっぱいだった。