翌日昼、再び野村氏の自宅を訪れた。野村氏は唐揚げ弁当をつまみ、ビールでのどを潤しながら言葉を紡いでいく。
「俺も清原と同罪なんで、偉そうなことを言える立場ではない。絶縁して10年で、どこまでおかしくなったのかもわからん。だけど、奥さんは結婚したばかりの頃から『おかしい』と思っていたんちゃうか。結婚したての頃、清原が俺に『亜希を蹴ったら、脇腹の骨にヒビが入った』と言うてきたことがある」
あくまで冗談っぽく言っていたとは語るものの、それが事実であれば常軌を逸した行為だ。口いっぱいに白飯を詰めながら語り続ける。
「結婚したばかりで遠征もしていないのに毎晩毎晩、家にも帰らず女と外泊ばっかりしていたんや。ホステスやママとかたくさんの女の子にちょっかい出して。奥さんも普通なら頭にきいへんとおかしいやろ」
清原容疑者は体調が悪化した義母を東京に呼び寄せ、マンションを購入するなど、さも夫婦愛は万全だったかのように見せていた。2人の子宝にも恵まれ、「子供たちをプロ野球選手にして、自分は監督として指導したい」と親しい人に漏らすほどだったが、素顔は違っていたようだ。
一方、野村氏は亜希元夫人と直接の面識はないと前置きしながら、こんなエピソードも明かした。
「俺と仲がいいホステスと同じ店で働いていたのが元アイドル歌手のAで、Aは亜希と交流があったんや。Aは亜希の結婚を知ると、『あんな女なのによく野球選手なんか捕まえられたね』と漏らしとったわ」
そもそも清原容疑者が亜希元夫人と交際しているとの報告もなく、婚約したことも報道を見て知ったほどだという。披露宴には参加したのかと問いかけると、
「は? 俺は披露宴やったなんて聞いとらんぞ! 何で(清原軍団の)ヘッドコーチの俺に言わへんのや! いつやったんや」
と激高する場面も──。記者と友人がなだめ、落ち着きを見せるものの怒りは収まらない。2つ目の弁当に手を伸ばす。
「清原は恩をアダで返したり、自分の都合の悪いことは語らへん『口だけ番長』や。04年秋、俺が台湾から戻ってきた時も、いきなり『ブツがいるから』と、覚醒剤を要求してきた」
だが、その数日後、2人の関係は決定的に崩れることとなる。野村氏は、清原容疑者、野村氏双方と交流があったX氏から「清原さんが呼んでます」との呼び出しを受けたのだ。X氏の素性については後述するが、そこで野村氏は清原容疑者から予想だにしない“餞別”を渡される。
「清原のところには連れて行かれず、Xから無言で10万円渡されたんや。訳がわからなかったから『何で、もらわなあかんのですか?』と聞いても無言や。あとでわかったことやが、Xは清原から『手切れ金として渡せ』と命令されてたんや」
当時の怒りから興奮を抑えられないのか、激しくツバや米粒を飛ばしながら続けた。
「すぐ清原に『揉めたいんすか』とメールを送ったんやけど、返信はなし。後日、Xから聞いたんやけど、そのメールを見て『(野村氏に対して)あのクソガキが!』とキレたらしい。せやけど、俺には直接よう言わん。ふぬけや」