社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「花粉症で抑えるべき症状はどっち?鼻炎症状と目のかゆみの危険性の違いとは」

 花粉症の人にとってつらい時期が続いているかと思います。日本気象協会によると、今年の花粉飛散量は日本各地とも軒並み多いようで、関東ではピークを過ぎたスギ花粉こそ例年並みでしたが、ヒノキ花粉は過去5年で最多となっているそうです。

 花粉症対策の基本は手洗いやうがいをきちんとすること。吸い込んだ花粉や体に付着した花粉を洗い流しましょう。外出時はマスクやメガネ、サングラスなどを着用している方も多いでしょう。見落としがちですが、部屋の中に花粉が入らぬよう戸締まりを忘れぬことも肝心です。加えて、飲酒や喫煙、ストレスは体の粘膜に悪影響を与えるので花粉の季節には控えめにするとよいでしょう。

 花粉が体内に入ると、私たちの体はIgEという抗体を作ります。このIgE抗体が一定量を超えるとアレルギー反応を起こし、アレルゲンやヒスタミンという化学伝達物質が神経を刺激するため、目のかゆみやくしゃみ、鼻詰まりを起こします。これが花粉症の仕組みです。

 では、今週の問題です。花粉症になった場合、より注意すべき症状は「目のかゆみ」と「くしゃみ・鼻詰まり」のどちらでしょう? 花粉症がきっかけとなり進行した病気のリスクを考えると、気をつけたいのは「目の病気」=アレルギー性結膜炎です。アレルギー性結膜炎とは、目の粘膜がアレルゲンやヒスタミンに刺激され結膜が炎症を起こすことです。アレルゲンに反応を起こして涙がたくさん出ることがありますが、その際に猛烈な目のかゆみを感じることがあります。アレルギー物質を涙で流そうとするために、血管が広がるため目が充血して赤くなるのです。

 問題なのは、目のかゆみを感じて目をこすってしまうことにより、角膜が傷ついてしまうケースです。この状態は、角膜障害と呼ばれ、最悪の場合は失明の危険性すらあります。くれぐれも汚れた手や花粉の付着した手で目の周辺や眼球、まぶたの裏などに触れないように注意してください。また、花粉症の時期は目ヤニの量もかなり増えるので、水で洗い流すことを心がけてください。

 アレルギー性結膜炎は重症になると、まぶたの裏側が赤く粒状に腫れる(=浮腫)のも特徴です。血液中の水分や白血球が血管の外へ染み出すことが原因となって、その形状は上のまぶたの裏側にブツブツが生じ、まるで筋子や石垣状になるので、すぐに医師に診断してもらってください。まぶたの裏の浮腫は眼球に直接触れるので、粘膜に障害が起こりやすくなります。ひどい場合は腫れた粘膜が目の外に飛び出すこともあるので、結膜炎も軽視しないでもらいたいものです。

 ちなみに、アレルギー性結膜炎が長引くと白内障になりやすくなるとも言われています。80歳になるとほぼ全員がかかる白内障ですが、50代の発生率は40%強、60代で70%強です。アトピーや糖尿病などの疾患、ステロイドなどの特殊な薬の影響や外傷なども白内障の発症原因であり、平均より早めの40代で発症するケースもあります。

 一方、くしゃみや鼻詰まりは、それ以外の異状は引き起こしません。生活において鼻声になり、軽い味覚障害を起こす不便はありますが、体に異状を来すことはありません。

 目の病気にもつながる花粉症は、最悪のケースを考えると、くしゃみや鼻詰まりの比ではありません。くれぐれも花粉症の季節は目を清潔にし、汚れた手で触れぬようにしてください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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