「資本主義化」路線に転換!?
反発するのは民衆だけではない。権力内部の対立も心配されているのだ。
4月に行われた一連の会議で、金正恩氏は朝鮮労働党の第一書記、最高権力機関である国防委員会の第一委員長にそれぞれ就任した。「第一」という名前はついているが、事実上の最高ポストである。これに合わせて、正恩氏の「側近グループ」も姿を現し始めた。
4月13日に開かれた最高人民会議(国会に相当)で、崔竜海(チェ・リョンヘ)軍総政治局長が国家最高機関の国防委員会委員に抜擢された。
崔総政治局長は金正恩第一書記の叔父、張成沢(チャン・ソンテク)国防委副委員長が率いた社会主義労働青年同盟(社労青)の責任者を務め、張氏の側近中の側近。張氏とともに2回左遷された経験もある。
この他、国防委員には金元弘(キム・ウォンホン)国家安全保衛部長と李明秀(リ・ミョンス)人民保安部長が就いた。保衛部は体制批判などの政治犯を取り締まる秘密警察であり、保安部は警察だ。この3人が新たな側近として注目を浴びている。
中でも崔竜海氏は、目立った軍歴がないにもかかわらず、軍の思想統制を担当する総政治局長に就任しており、軍では元帥に次ぐ地位の次帥でもある。つまり党、軍、国家機関の要職を兼任しているわけだ。
その権力を誇示するかのように、公開の場所では正恩氏の横にぴったりと寄り添っている。
崔総政治局長の高速出世は、張成沢氏ら党を基盤とした経済派の軍掌握策と言われている。
「軍の中には、正恩氏に忠誠を誓う強硬派が少なくない。このため張成沢氏らは、軍の動きを封じ込めるため、崔氏を総政治局長として軍に送り込んだ」(韓国の情報関係者)
との見方がもっぱらだ。
軍の動きを牽制したうえで、徐々に経済の改革・開放を推し進め、経済の建て直しを図ろうという狙いである。
韓国では「北朝鮮は19年までに、中国のような改革・開放路線に舵を切る」との噂もまことしやかに流れている。その証拠に、すでに、
「正恩氏の指示で、土地の長期賃貸のような部分的な土地改革や農作物の自主的な販売権容認などが検討されているようだ」(中国の貿易関係者)
党幹部らに対する金正恩氏の発言録(1月28日付)によれば、新指導者は、資本主義的手法の取り入れを含めた経済改革論議を促している。
深刻な経済危機脱却の糸口を探るため、金正恩氏は近い将来、大幅な経済改革を実施する可能性が出てきたとの証左である。もはや恫喝外交による、諸外国からの食料や物資の支援だけでは立ち行かなくなったと判断したのだろう。
そのためには攻撃的な軍部をコントロールする人物が必要ということだろうが、今後激しい路線対立を起こし、一気に国情が不安定になる危険性も十分にはらんでいるのだ。
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