医学的に言うと、「突然死」とは、直接の死因となる症状が表れてから24時間以内に死亡することを意味する。驚くことに、今や心筋梗塞や脳卒中などで突然死する人の数は年間約10万人。その枠に入らないために我々がすべきこととは何なのか。
文字にすると一段とおどろおどろしくなる「突然死」。死亡率トップのガンに迫る勢いで増加しているという。「突然死しないのはどっち?」(すばる舎)の著書で知られる血管の名医、池谷医院(東京都あきる野市)の池谷敏郎院長に、朝起きてから夜寝るまでに潜む突然死の危険と、安全に1日を過ごすための行動を解説してもらった。
まずは、起床──。朝は自律神経が副交感神経から交感神経へと変わる不安定な時間帯である。そのため、突然死のリスクが最も高いと言われるが、目覚まし時計が鳴ってもすぐに起きてはいけない。スマホでお気に入りの曲を大音量で流して飛び起きる。そんな人も少なくないはずだが、
「人間の体というのは起きる頃、自然に交感神経が緊張し、脈や血圧が上がり始めています。そんな状態で突然、大きな音で飛び起きたら交感神経が一気に緊張し、心臓に負担がかかることになります」
朝は「スヌーズ機能付き目覚まし時計」でゆっくり起きる。それが突然死回避につながるという。
正しく布団から出たら、まず向かうのがトイレ。
「特に疲れている時や酒を飲んだ翌日に多いのが、排尿を我慢して血圧が上がっている状態から、放尿で血圧が急降下し、排尿失神を起こしてしまうケース。失神して転倒時に衝撃を受ければ、脳出血やクモ膜下出血を起こす可能性もあります。そのため、男性も座ってしたほうが安全です」
トイレを我慢するだけで血圧は急上昇するので、我慢しないことも重要だ。
無事にスッキリしたら、洗面所へ。冷たい水で顔を洗って気分をシャキッとさせ、1日がスタート‥‥すると思ったら、これも間違いだった。
「これからの季節はまだしも、特に冬場の寒冷刺激は血圧を上昇させるので、たいへん危険です」
朝は自律神経が不安定な時間帯。突然死を防ぐためにも、洗顔や歯磨きはぬるま湯で行う。これが鉄則だ。
出勤前の時間を利用してジョギングで汗を流すビジネスマンも多い。
「起きて1時間以内は、脳卒中や心筋梗塞が最も多い“魔の時間”です。特に夏場は大量の汗をかくため脱水状態になり、血圧、脈拍ともに上がって血液が固まりやすくなる。そんな状態で走るなんて危険な行為に他ならない。せめて起きてから1時間くらいはダラダラするべきです」
どうしてもジョギングしたい場合は夕方に。それが無理なら、帰宅後がオススメである。
ジョギングを思いとどまったところで、朝食の時間となった。実はこの朝食が、1日の食事メニューの決め手となるという。
「健康にいいからと、朝はバナナとリンゴにハチミツをたっぷり入れたスムージーを飲み、さらにトーストやシリアルも食べるなんていう人がいますが、これではカロリーが高すぎて逆に健康を害します。朝食で1日のバランスを考え、例えば夜に飲み会があるなら、朝昼は軽く済ませておく。そう心がけるだけで、食べすぎ飲みすぎは防止できるはずです」