モデルの押切もえによる2冊目の小説「永遠とは違う一日」が、山本周五郎賞の候補作品にノミネートされた。5月16日の選考会で受賞を果たせば、芥川賞を受賞した又吉直樹に続いて芸能界からは2年連続での快挙となる。そんな押切の筆力はどう評価されているのか、出版社の編集者はこう語る。
「読書家で知られる押切ですが、1作目の小説『浅き夢見し』は凡庸な構成でしたし、長編を書ききる力はまだ身についていないようです。太宰治が好きだそうですが、その太宰も短編作家の側面が強いですし、押切自身も長編志向ではないように思えます」
その評価にたがわず、今回の小説も連作短編集の形を取っている。長編が苦手なら短編が得意とは必ずしもならないが、本作については押切の長所が活かされているという声もあるようだ。前出の編集者が続ける。
「モデルとしての経験は彼女ならではの強み。一線級で活躍した期間も長く、エッセイやコラム向きのエピソードはかなり溜め込んでいるはずです。16万部突破のエッセイ集『モデル失格』でも、モデル業界の裏側が分かって面白いという読者が多かったようです。又吉が『火花』でお笑い業界を描いていたように、芸能人作家はやはり本業をテーマにするのが得策なのかもしれません」
そんな押切にはぜひ、次回作では野球選手の彼女だからこそ書けるテーマを期待したいものだ。
(金田麻有)