「火花」の芥川賞受賞で、いまやすっかり作家然としてしまったピース・又吉直樹。発行部数も累計169万部を突破と、出版不況などどこ吹く風。先日出席したイベントでも、1億円を超えるとされる印税について、「事務所と話し合った。もうすぐ最初の分が入るようです」と、懐具合のほうもホクホクの様子だ。
だが、気の早い周囲は続く第2作、3作のほうに興味を移し、水面下では“又吉利権”の激しい争奪戦が展開されているという。出版関係者が話す。
「『火花』の場合、小説にとどまらず映画化の企画も出ており、総合的に見れば100億円の経済効果があると言われます。もともと又吉は、新潮社や幻冬舎との付き合いが濃かった。この2社は『一番おいしいところを文藝春秋に持っていかれた』との思いが強い。あの手この手で、又吉の新作を狙い、水面下で動き始めています」
しかし、芥川賞や直木賞に名を連ねる人気作家となると、刊行予定は数年先まで決まっていることも珍しくなく、出版社との契約内容や親密度によって争奪戦の行方は大きく左右されていく。
「又吉が作家として今後何年経っても色あせない存在でいられるかどうか、その保証は何もありません。最悪、作家としては“一発屋”で終わる可能性もある。それだけに、いかに旬の時期に獲物をキャッチするかが、各出版社の腕の見せどころですよ」(前出・出版関係者)
又吉の次回作に注目しているのは、ファンだけではないということだ。
(栄巌鉄)