菅野の心から“G離れ”が加速している理由は、もう一つあった。
伯父の原前監督が指揮官の座から昨季限りで退任。12年のドラフトで1位指名され、巨人入団を果たした菅野にとって血縁関係も深い伯父・原前監督はチームの中でこれ以上ない礎であり、唯一無二の存在だった。しかし、その原前監督が昨季限りでチームを去り、現在、菅野にとって巨人は居心地がいい場所ではなくなっているようだ。その背景には、巨人入りに執念を燃やした祖父で、母校・東海大野球部総監督だった原貢氏が、すでに一昨年に亡くなっているという事実も無視できない。
そもそもメジャーリーグ志向が強かった菅野にとって、巨人に対するしがらみがなくなったのである。
「菅野はメジャーに強い興味を抱いていますよ。それだけに昨年秋のプレミア12では、侍ジャパンに初選出されながらも結果が出せなかっただけでなく、他球団主力投手の力にもカルチャーショックを覚えた。今季のテーマを『圧倒』としたのも、来年春のWBCでの活躍を誓っているのも、その視線の先にメジャー移籍を思い描いているからです。菅野の海外FA権取得は早くても21年のシーズン中ですが、ポスティング・システムでの移籍が視野に入ってきた」(菅野に近い関係者)
とはいえ、巨人はこれまでポスティング・システムによる移籍を認めた例がない。桑田真澄氏(48)や上原浩治(41)=現レッドソックス=も御多分に漏れず、海外FA権取得前の直訴は実らなかった。
「それはあくまでもナベツネさん体制下での話ですからね。すでに3月、野球賭博問題で最高顧問から引責辞任していたナベツネさんは6月1日付で本社の会長職からも退き、より球団とは距離を置くようになった。菅野が新体制に変わった読売本社および球団に強い決意でメジャー移籍を直談判すれば、根負けするかもしれない土壌ができてきたんです。菅野はXデーに備えてモチベーションを高め、球団への忠誠とは別の理由で連日好投を続けている」(前出・菅野に近い関係者)
高橋監督の「無能疑惑」に加え、絶対エース・菅野の「メジャー流出危機」──。皮肉にも今季のジャイアンツは、チームスローガンの「一新」をあらためて迫られるような雲行きとなってきた。