Xと植松容疑者の関係も奇妙に見えたという。
「植松の3歳下だと言っていましたが、すごく崇拝していて、植松は『Xさん』と呼び、Xは『植松』と呼び捨て。食事中にXの口元に食べかすが付いていたら、植松が拭いてあげるんです」
XはAさんに福島県出身で中学の時に相模原市に引っ越し、最終学歴は中卒だと説明。だが、Xのフェイスブックには、横浜市在住で学歴として私立大学の記載がある。素性がバレるのを避けたのだろうか。
「Xの背中には桜柄の入れ墨があり、『闇金の人が見せるために入れている。だから俺も入れた』と見せてきました。仕事は覚醒剤や麻薬を扱う売人で、自分のバックには、『山菱の指定されていない方がついている』と話していた」
「山口組」を匂わせたようだが、現実の組員がこのように名乗ることはない。ばかりか、偽称した者を許すこともない。
7月5日にXから呼び出された時も、防犯カメラが少ないという理由で六本木ヒルズの敷地内だった。その時、Xから「革命のための教本」を見せられる。
「A4用紙約20ページで、表紙には『三か月計画書』というタイトルと、安楽死を連想させるように、外国人女性がベッドで目をつぶり、家族に囲まれている写真がありました」
その中身をじっくり読ませてもらえる許可が下りたのは、3回目(7月7日)に会った時だ。
「表紙をめくると、大島理森衆院議長に送った手紙の縮小版と、障害者福祉を管轄している厚生労働省に送る予定の手紙が載っていました。次のページはグループのメンバー紹介で、写真はなく、名前、前科、性格が書いてあった。前科者の中には殺人1人、放火2人、強姦1人がいました」
続いて「1」と大きく数字が書かれ、活動資金や計画に必要な金額、人員確保のため、「7月21日までに1人5人以上」とノルマが記されていた。
「次のページは『2』と書かれ、事件が起きたやまゆり園の地図と実行犯に植松の名前が載っていた。決行日は7月26日深夜、車2台、逃走用の車の配置などが書いてあったのです」
襲撃対象者として、障害の重さを表す障害支援区分の数字「4~5」が記されていたという。実際、植松容疑者は犯行時に職員を結束バンドで縛り、重度障害者の居場所を聞いている。また、防犯カメラには、犯行直前に植松容疑者が施設近くに車を止めたあと、その場を行き来する姿が映し出されていた。計画書に「車2台」とあり、仲間を探していた様子ともうかがえる。
「計画書にはサバイバルナイフやナタ、ノコギリやハンマーなどの武器や、結束バンドの使い方が図解入りで載っていた。安楽死させるために、心臓ではなく首や頭を狙うのもグループの決まりだったようです」
その理由は、植松容疑者がAさんに「バイブル」と告げた、漫画「罪と罰」が影響しているようだ。
そのストーリーは主人公の大学生の男がある日、売春組織の存在を知り、金を奪うためにリーダーの女子高生を殺害する計画を実行する。部屋にリーダーをおびき寄せた男は、ナタを頭に振りかざして殺害。犯行を目撃した女子高生もナタで頭を攻撃して殺す、というものだった。