相模原市の障害者福祉施設で起きた戦後最悪の刺殺事件。深夜に突如、侵入した殺人鬼は、数十秒に1人のペースで無抵抗の入居者を刺した。血の海と化した現場から立ち去り、出頭したのは施設の元職員だった。もはや「許しがたい犯行」という形容さえむなしく響く残虐非道男のプロフィールとは。
「重度の障害者は生きていてもしかたがない。安楽死させたほうがいい」
今から約5カ月前、同僚職員にそう語っていた男は7月26日午前2時頃、その言葉を「実行」に移した。神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の窓ガラスをハンマーで割って侵入。刃物を使ってわずか10分で10人を殺害するほど、その殺意は強いものだった。男は、約45分で計19人を刺殺し、26人に重軽傷を負わせる。殺されたのはいずれも障害者で、戦後最悪の大量殺人であった。
駆けつけた消防隊員が施設内に入ると、床や廊下は一面血の海と化し、首を刺されて横たわった入居者が、「うぅ‥‥」と悲痛なうめき声を漏らしていた。犯行後、男は自身のツイッターに、〈世界が平和になりますように〉と投稿。午前3時頃、現場から約7キロ離れた神奈川県警津久井署に、車で出頭した──。
神奈川県警に殺人未遂などの容疑で緊急逮捕されたのは、元職員の植松聖容疑者(26)だ。出頭時に乗っていた乗用車から、血の付いた結束バンドや、血に染まった3本の刃物が見つかり、現場からも刃物2本が押収されている。
植松容疑者は、2月15日に大島理森衆議院議長の住む公邸を訪れ、警備の警察官に手紙を手渡していた。そこには、
〈作戦内容 職員の少ない夜勤に決行致します。重複障害者が多く在籍している2つの園を標的とします。
見守り職員は結束バンドで見動き、外部との連絡をとれなくします。
職員は絶体に傷つけず、速やかに作戦を実行します。2つの園260名を抹殺した後は自首します。〉(原文ママ)
重複障害者とは2つ以上の障害を併せて有する人のことである。
植松容疑者が3枚にわたって自筆した詳細な「犯行計画」。常軌を逸した内容に驚いた警視庁麹町署は、その日のうちに、自宅を管轄する神奈川県警津久井署に連絡し、手紙をファックスで送付した。だが、犯行の「予兆」はこれだけではなかった。捜査関係者はこう話す。
「1月頃、『障害者を殺したい』と友人らに連絡をしていた。公邸への手紙と同内容のメモを読み、安倍総理にも手紙を送ろうとして友人に止められている」
家宅捜索の結果、植松容疑者の自宅から、手紙の下書きが発見されている。
植松容疑者は、犯行現場から直線約500メートルの自宅で育ち、近所では好青年という評判も多く聞こえる。
「挨拶をする時は、笑顔でハキハキとしていた。小中学校は地元の公立学校に通い、高校は八王子市内の私立校に進学。バスケ部に所属していて、自宅の前の石垣に向かってパスをしたり、ドリブルの練習をしていました」(近隣住民)
高校時代には、交際相手の女性とデートする姿も目撃されている。
「家の周りで、彼女と手をつなぎながら散歩している様子を何度か見ました。女性は黒髪で清楚な雰囲気。植松も短髪で『爽やかカップル』という感じでしたね」(中学の同級生)