仕事のできない社員は、給料の額を抑えられるのが世間の常識だ。ところがプロ野球界を見渡せば、ろくに試合にも出ないでサラリーマンの生涯年収を1年程度で稼ぐ「給料泥棒」がゴロゴロ。なけなしの金をはたいて応援するファンをしらけさせないためにも、「不良債権」は迅速に処理すべきである。
年俸4億円の代打屋誕生か
「外から城島(健司・36)や小林(宏・34)を呼んでも活躍していない。給料は高いのに、不良債権を抱えているだけだ」
こんな過激な発言をしたのは、6月14日に開かれた阪神タイガースの親会社・阪急阪神ホールディングスの株主総会に出席した男性株主だった。
それにしても「不良債権」とは、よく言ったものである。別表のとおり、プロ野球界には高給を取るだけ取って働かない選手が増加の一途。特に阪神は、そのあとに価値が暴落する土地を買いあさったバブル期よろしく、不良債権を抱えるのが今やお家芸である。
昨年の戦犯とも言われ、今年は一軍登板すらゼロの小林は、ファームでも復調の気配が見えず論外だが、わずか24試合の出場で打率1割7分9厘(成績は6月28日現在、以下同)という成績の城島も年俸から考えれば、利息の支払いが滞っていると言わざるをえない。
5月22日には椎間板ヘルニアの手術を受けたが、長期欠場どころか、このまま復帰しないとの不吉な声まで上がっているのだ。
「手術前の城島は、日常生活で杖を突かなければ歩けないほどの重症で、プレーをしていたのが奇跡ですよ。しかも手術は100%成功するとは限らないうえ、実は腰だけでなく首にも爆弾を抱えている。首を前後左右に軽く動かすのも苦痛を伴うほどだそうです。これだけ満身創痍では、正捕手復帰はおろか、たとえ復帰できても年俸4億円の代打屋となるしかない」(阪神関係者)
現状の阪神打線は、弱肩を承知で年俸2億2000万円の金本知憲(44)や、年俸2億5000万円ももらいながら得点圏打率はわずか2割2分7厘の新井貴浩(35)に頼っている。
中でも、2年連続のリーグ最多安打を記録し、オフに2年契約を結んだマートン(30)の63試合で54安打という低迷ぶりは深刻だ。
スポーツライターが言う。
「マートンが成績を落としたのは、今年からストライクゾーンが広がり、昨年まで見逃していたコースへの対応ができていないため。しかし、球団関係者の中からは、『不調はわざとなんじゃないか』などと、うがった見方も出ている。メジャー志向の強いマートンが、阪神サイドの口から『2年契約破棄』を言わせようとしているのではないかというのです」
そんな深読みの背景として、すでにマートンがシーズン直前にメジャー関係者と接触したとの情報が流れている。
「3月に阪神はマリナーズとオープン戦を行っています。その試合にマートンは帯同しなかったのですが、旧知の間柄だったマリナーズの幹部から電話があったそうです。なんでも、日本でヒットを量産したイチローがメジャーで成功したことを引き合いに出して、自分にも同様の活躍ができると言われたとか。同じようにメジャー志向の強い例では、調整遅れで今季二軍スタートとなり、まだ9試合しか投げていなかったヤクルトの林昌勇(36)が右肘手術で今季絶望となった。来季のメジャー移籍を見据え、肩を温存していたのでは、とも言われていましたが‥‥」(前出・スポーツライター)
メジャーが次々と不良債権を安く買い叩いていけば、まさにハゲタカファンドそのものであろう。
小笠原はFAでDeNAへ
株主総会での糾弾といえば、実は西武も涌井秀章(26)の女性問題で心配していたという。
球団関係者が語る。
「謹慎処分中も反省していたかといえば、疑問符が付きます。二軍での練習後に『恵比寿行くぞ、恵比寿。ちゃんとした格好して来いよ』などと若手選手を盛り場に誘う姿が目撃されたほどですから」
実際には、6月22日に行われた西武ホールディングスの株主総会で阪神の再現とはならなかったが、球団はピリピリムードだった。
「スキャンダルまみれの選手に大金をつぎ込んでいるという現状は、再上場に向けてマイナス要素ですからね。涌井が謹慎処分を解かれ、同日に一軍登録されたのも、試合はナイターのため、涌井が久々の登板を果たしても、総会はすでに終わっていて突っ込まれないという読みだったのでしょう。みごとにこの難局はクリアしましたが、球団が選手をかばわず、親会社の顔色ばかりうかがっていることには、選手もしらけムードです。昨オフに帆足和幸(32)がFAで西武からソフトバンクに出て行ったことにも、こうした背景が関係あるのでは」(球界関係者)
とはいえ、年俸変動性で最大総額10億円の4年契約を結びながら、これまでたった1試合しか登板していない帆足もソフトバンクの不良債権となっている。
もちろん親会社からの「公的資金注入」がガンガン可能な巨人は毎年、不良債権の山だったが、今年は交流戦からの快進撃もあって、それなりに年俸に見合う活躍をする選手が増えている。それだけに、チーム最高年俸を誇る小笠原道大38)の打率1割6分4厘という体たらくには目を覆うばかりである。「小笠原は、5月に肉離れで登録を抹消されましたが、昨年から動体視力が衰えたのは明らかで、打撃不振での降格だったのではと番記者の間ではささやかれました。6月に一軍復帰したものの、11打数ノーヒットと結果が出ず、今度こそ正真正銘、打撃不振での降格となった」(巨人番記者)
引退の文字もチラつくが、小笠原といえば巨人が07〜09年に果たした3連覇の功労者。それでも衰えれば簡単に冷遇するのは、「外様に冷たい」と揶揄される巨人ではいつもの光景だ。
「FA権を保持している小笠原の中では、移籍も視野に入っているようです。実はアテネ五輪で長嶋監督に代わって指揮を執った中畑監督を『オヤジ』と呼んで慕い、今でも連絡を取り合っている。最後の一花を咲かせるため、オフのDeNA移籍もありそうです」(前出・巨人番記者)
一方、かつて巨人に外様として在籍し、価値が下がる前にみずからFAでソフトバンクに買い戻してもらった小久保裕紀(40)も、年俸の額からすると、得点圏打率2割5厘、打点12はチーム内で「回収不能」の成績と見られているようだ。
「ついに6月24日、あと1本と迫ってから1カ月のブランクを経て2000本安打を達成しましたが、首脳陣の一人は『使い方が難しい』と嘆いていました。城島同様、椎間板ヘルニアですから、日常生活にも支障が出るほどなのに、気を遣いながら起用しなければならなかったからです。記録を達成した今、『若手に1枠譲ったら』との声もある」(前出・球界関係者)