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急逝!「世界の山ちゃん」創業者・山本重雄氏の「サービス哲学」

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 “幻の手羽先”を武器に全国展開し、海外にも出店した居酒屋チェーン「世界の山ちゃん」。その創業者・山本重雄氏が8月21日に急逝した。享年59。手羽先の唐揚げを名古屋から世界へと羽ばたかせた経営者の「サービス哲学」とは──。

「名古屋のスーパースターですよ。ボンボンが多い今時の経済界で、山本会長はまさにゼロからの叩き上げ。手羽先が売りの店に、『世界の──』をつけて、名古屋食を広めてくれたことには本当に感謝しとるよ。市民栄誉賞をあげることも考えないといかんわ」

 公私にわたって親交があった河村たかし名古屋市長はこう言って死を悼む。叩き上げの名物経営者は、自衛隊出身だった。

「岐阜県の山村で生まれ育った山本氏は高校卒業後、海上自衛隊に入隊。そこで調理班として料理の腕を振るいました。3年後に除隊すると、居酒屋チェーンで従業員として経験を積みながら開業資金をためたんです」(地元紙経済記者)

 山本氏が独立して名古屋で「串かつ・やきとり やまちゃん」を開業したのは1981年、24歳の時だった。店の広さはわずか4坪。夕方6時から朝5時まで、たった一人で店を切り盛りした。躍進のきっかけは手羽先の唐揚げだ。もともとは名古屋の鶏料理店「風来坊」の看板メニューだったが、山本氏はそこに自分流のアレンジを加えた。

 フードジャーナリストのはんつ遠藤氏が解説する。

「数種類をブレンドした秘伝の“合わせコショウ”でピリリとスパイシーに仕上げるのが特徴。しょうゆベースの甘ダレが下支えになって、こってりした味が好まれる名古屋で大評判になりました」

 手羽先を2つにちぎり、歯に挟めばスルリと身が取れる食べやすさも人気の秘密だ。

「キレイに骨が抜けるのは肉の鮮度がいい証拠。取材の過程で知ったのですが、山本会長は仕入れ業者に対して、不当な値下げ要請や買い叩きをしなかったそうです。そうした信頼関係も、安定した手羽先の味を支えていたのではないでしょうか」(前出・遠藤氏)

 すぐに売り切れるため、常連客からは「幻の手羽先」と言われ、それがいつしか商品名になった。この「手羽先効果」で店は大繁盛し、一つ、また一つと店舗を拡大していく。

「あるスタッフが店にかかってきた電話に出て、ノリで『世界の山ちゃんです』と応対したのを聞いて、山本氏はえらく気に入り、店名に『世界の』を付け加えたんです。ユニークな店名とともに看板に描かれているマスコットキャラクターは、山本氏をモデルにしたもので、こちらも店舗の知名度アップに貢献しました」(前出・経済記者)

 名古屋での人気を不動のものにし、03年には神奈川県の川崎をはじめ関東進出を果たす。

 当時のアルバイト従業員が振り返る。

「都内の店舗で働いていたら、知らないオジサンが厨房にやって来て、いきなり皿洗いを始めたんです。店長に素性を聞けば、なんと山本社長(当時)。何でも、東京で出店ラッシュが続いていた頃、1日に何店舗も回って現場の士気を高めていたようです」

 14年には香港に海外1号店を出店し、文字どおり「世界の山ちゃん」に育て上げた。09年に社長職から退いて会長に就任すると、そのサービス精神は店外にも向けられていく。

「山本氏が得意としていたのが手品。ボランティアグループに参加して、老人ホームや介護施設を慰問で回っていました。地域の交流会にも積極的に参加し、そこでもマジックを披露して会場を沸かせていましたよ。実は、シャイで口下手なんです。手品は彼流のテレ隠しだったのかもしれませんね」(前出・経済記者)

 寡黙なアイデアマンが30年以上守り続けた「幻の手羽先」は、今も全国の店舗で味わえる。

「やはり、出来たてのアツアツがいちばんおいしい。たくさん注文しすぎて、冷ましてしまうのはもったいない。他の料理も楽しみながら、小出しに頼むのがオススメです」(前出・遠藤氏)

 名古屋メシを全国区にした功績と温かい人柄があらためて偲ばれる。

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