六角精児といえば、テレビドラマ「相棒」での鑑識官役など、名バイプレイヤーとしてドラマや映画に引っ張りだこの、超個性派俳優。かつてはギャンブラーとして鳴らし、離婚歴も3回と、私生活での話題も豊富だが、実は芸能界有数の一風変わった鉄道マニアとしての顔も持つのだった──。
車両内で、そして旅先で酒を呑み、旅情を楽しむ。「呑み鉄」なる新ジャンルを切り開いた六角精児(54)は「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」(NHK-BS)なるレギュラー番組を持つ鉄道マニア。この8月には、そのこだわりと旅の思い出をつづった著書「六角精児『呑み鉄』の旅」(世界文化社)も発売した。鉄道好き、旅好き、そして酒好き中高年にはもってこいの「呑み鉄」の極意とは何か。
六角が育ったのは兵庫県高砂市。記憶の原点には伊保から姫路に行くために乗っていた山陽電鉄があるそうだが、
「確かに子供の頃から鉄道は好きだったんですが、実は、今のような鉄道ファンになったのは30代後半。というのも、それまでの僕はギャンブルに明け暮れる毎日で‥‥。こんなことをしていたら身が滅びるのは時間の問題だと思ってね。で、もともと鉄道は好きだったし、競輪場へも電車を利用していたので、じゃあ今度はギャンブル場へ行くという目的から、純粋に鉄道について知識を深めてみようと思ったわけです」
鉄道ファンは「乗り鉄」や「撮り鉄」、さらには「音鉄」「録り鉄」といったさまざまなカテゴリーに分類されるが、「呑み鉄」はさて、どこに属するものなのか。
「立ち位置としては『乗り鉄』でしょうかね。僕の場合は酒が好きだから、酒と食べ物をプラスして呑み鉄になった。要するに、鉄道旅行ですよ。ただ、呑み鉄というのは鉄道の中だけで酒を楽しむというのではなく、風景を楽しみ、その土地ならではの食と旅先での出会いを肴に酒を楽しむことでもある。それが呑み鉄ならではの醍醐味です」
出発前夜に時刻表を見て行き先などを決め、極力、計画性を持たない。
著書には北海道から九州まで、都会の喧騒を忘れさせてくれる大自然の風景と、旅先で味わった酒や肴、そして、その土地の居酒屋やスナックで出会った人たちとの触れ合いが臨場感たっぷりに紹介されている。とはいえ、中には何時間も景色が延々と変わらない土地もあるが、
「例えば、中国地方の奥のほうがそんな場所。中国地方は北を山陰本線、南を山陽本線が通り、双方から縦に延びるローカル線がたくさんあって、それぞれの路線距離は短いわりに、列車本数が少ない。しかも、山間部のローカル線はどの路線を乗っても景色は単調で、本当に果てしなく何もない。そんな感じだから、乗り継ぎで3時間ぐらい平気で待たされます。そんな時は暇つぶしにスーパーマーケットがあればのぞいてみたり、街をウロウロします。ただ、パチンコはやりませんね。まず出ないから。経済が活性化しているところ以外は出ない。田舎に行って打つなら、そこからタクシーで街道沿いにある『エスパス』なんかを探さなければいけない。そうなると、旅の目的から大幅にズレてしまいますから(笑)」