ところで、日本全国の美味を食しているであろう六角の大好物の一つが、あぶり明太子。
「九州といえば焼酎。僕は自宅でももっぱら焼酎派なので、九州に行くと居酒屋、スナック、列車内とついつい酒量が増えてしまいます。で、焼酎に合うのが博多の明太子。特に表面はカリッと香ばしく焼けているんだけど中身はレアさ加減が残る、あぶった明太子は最高。これがあればいくらでも飲めるので、本当に困ります」
さらに、九州のスナックのおおらかなノリも大好きで、
「南国気質なのかどうかわかりませんが、九州のスナックはママや常連客もやたら明るくて、まず湿っぽい雰囲気にならないし、酒の作り方も大胆(笑)。スナックというのは、お酒をついでくれる人の性格とあんばいしだいですから、なかなか自分のペースでは飲めない。だからどれくらい飲んでいるのかわからないうちに、気がついたらすさまじい千鳥足になっている、というわけです」
袖振り合うも多生の縁とばかりに、一期一会を満喫。出されるものを全て平らげ、南国の美味と人との触れ合いを堪能したという。
「日本には景色や街並みだけじゃなくて、まだまだすばらしいところがたくさん残っています。でも、どこもかしこも高齢者が生活する場所になってしまっている。これは本当にもったいないこと。だからといって、たくさんの人が押し寄せて観光地化してしまうのも問題ですが、ただ、そんな場所に我々ひとりひとりが自分だけの旅行スポットを見つけに行けばいいじゃないですかね。そうすれば、何か広がる可能性がある。そしてそれが文字どおり、ディスカバージャパンになるはずだから」
一見、計画性のない行き当たりバッタリに思える呑み鉄旅。だが、実はそうやってひとりひとりが一歩を踏み出すことで旅の楽しみ方も変わってくる、と六角は言うのだ。
「よく『長時間乗っていると飽きませんか』と聞かれることがあります。でも、飽きたら目を閉じていればいいんです。ゆっくり流れる時間の中で心地いい揺れに身を任せ、ふと目覚めるとまだ同じ電車の中で同じ風景が続いている。で、酒をまた一杯。こんな楽しみ方も、呑み鉄ならではですからね」
慢性的な不況、非正規労働者の増加、年金減額‥‥全てにおいて世知辛い昨今、ひとときの安らぎを求めて、大人の呑み鉄旅に出かけてみるのも悪くない。