3年前、ロッテがシーズン3位から日本一になった時は「史上最大の下剋上」と騒がれた。だが今季は、それをさらに上回る「CS問題」が浮上している。もしも広島が3位でCSを制したら‥‥。その「勝率」を巡って論争が巻き起こり、大モメすること必至だからだ。
今季は一家言あるプロ野球ファン同士が、居酒屋で丁々発止の激論を戦わせるシーンが多いに違いない。バレンティンの「55号問題」が終わったかと思えば、間もなく訪れるのはクライマックスシリーズ(CS)。野球ファンがモノ申したくなるのは、3位チームの成績だろう。
楽天に初優勝のマジックが点灯しているパ・リーグは、ロッテとソフトバンクがデッドヒートを繰り広げているが、セ・リーグに目を向ければ、例年とは違った様相を呈している。すなわち、3位・広島が64勝67敗2分で、首位・巨人と17.5ゲーム差、勝率は4割8分9厘。まだ3位滑り込みを諦めていない4位・中日も、巨人と23ゲーム差の勝率4割4分6厘というありさまである(9月20日現在)。そう、勝率5割切りチームのCS進出が現実味を帯びてきているのだ。
07年のCS導入後、確かに首位と大量ゲーム差の3位球団はあった。例えば09年のヤクルトは巨人と22ゲーム差。71勝72敗1分だが、その借金はわずか1である。11年の西武はソフトバンクと20.5ゲーム差の68勝67敗9分、さらに昨年のヤクルトは巨人と20ゲーム差ながら、68勝65敗11分と、これも勝率5割以上で終えている。
ちなみに、3位から日本一を奪取する大波乱を演じて「史上最大の下剋上」と言われる論議を呼んだ10年のロッテは、首位ソフトバンクとはわずか2.5ゲーム差だった。
今年の広島、あるいは中日のように、試合の半分も勝てないチームがCSに出ることに違和感を覚えないのか。はたしてこうした事態は想定されていたのか。
前半戦が終了した今年7月17日、東京・渋谷公会堂での講演会で、いち早くこの現状に論を投じていたのは落合博満氏だった。
「最近、『5割を切った球団がCSに出てきたら格好つかないよな』と言い始める人が(球界から)いっぱい出てきたんです。でも、お前らがそのルールを作ったんだろ。オレは最初から反対したんだ。いいじゃないの、勝率4割5分ぐらいのところが2位のところに勝って1位にも勝って、パ・リーグから出てきたところにも勝ったら、何だ勝率5割もいかないところが日本一になったのか、と。オレ、大喝采したい。だって皆さん、それを望んだんだから。野球界が望んだんだろ。最初から、5割を切ったチームが出てきちゃいけないって、そういうルールを誰も作ってない。こんなもの最初からわかりきってたことだよ。いつかはこういう時代が来るだろう、と」
前半戦終了時の広島は2桁借金。皮肉タップリの正論に、観客はうなずくばかりだった。
◆アサヒ芸能9/24発売(10/3号)より