北海道日本ハムが広島カープを4勝2敗で下し、10年ぶり3度目(東映時代含む)の栄冠を手にした、今シーズンのプロ野球日本シリーズ。広島・黒田博樹は第7戦の先発が予定されていたが、6戦目で決着がついたため、第3戦での敵地である札幌ドームでの先発登板が現役最後のマウンドとなった。
広島の敗退が決まった直後、黒田はこのように語った。
「(終わった)実感がない。それが率直な気持ち」
「当然、明日投げる準備をしていたので。自分の野球人生が終わるというより、負けてしまった気持ちの方が強い」
14年オフにメジャー球団からの超高額オファーを断り、古巣の広島に復帰し、今季25年ぶりのリーグ優勝に貢献した黒田に、緒方孝市監督は「彼の存在がリーグ優勝に導いてくれた」と感謝の言葉を口にするのだった。
さらに、球団関係者は“カープ愛”を貫いた黒田の男気エピソードを明かす。
「08年メジャー移籍後、世界的なスポーツメーカーであるナイキ社は黒田に1億円を超える超高額オファーを提示してきました。ところが、黒田は『ノンプロ時代から支援してくれた人たちを大切にしたい』と、そのオファーを一蹴。世界のナイキに比べたら小さな大阪のスポーツメーカーの『SSK』(エスエスケイ)の野球用具を使い続けたんです」
さる10月31日、広島は黒田の背番号である「15」を永久欠番にすると発表した。その理由について、松田元オーナーはこう語った。
「理由は2つある。1つは彼の残した成績と今年優勝したということ。それとお金じゃない価値観というのを今の社会に示した。15年、20年たっても日米通算203勝した投手というだけではなく、彼が与えた影響などが記憶に残るようにしたかった」
黒田の男気に満ちた不屈の野球道は、プロ野球ファンの語り草となることだろう。