安積明子(政治ジャーナリスト)
「元々、増税派。今さら反対だと言っても驚くだけ」
十数%という「小沢新党」支持率、期待値について、「(実際に)新政党を結成すれば数字は上がる」と三宅(雪子)さんは言いますが、それは甘いですよ。彼女は「まだ党ができていないのに、それだけの支持率があるのは立派。民主党の支持率も同じぐらいだ」と。それを言うなら、まだ国政にも出ていない大阪維新の会の支持率と比べるべきでしょう。
そもそも新党を作ればヒットするのかというと、もちろんそうではありません。かつて(小沢氏が作った)新生党は発展的解消で新進党に合流しましたが、その新進党は小沢さんが党首になってから分裂した。その後、自由党が作られると、いわゆる自自公連立をやり、しかし存在感を発揮できずに民主党へと合流しています。政権を取った民主党以外は成功していません。
結局、ミエミエなんですよ。増税反対、脱原発と言いながら「日本改造計画」(自民党離党直前、93年の著書)は、消費税10%をうたっています。その後、細川内閣では(消費税率を引き上げて)国民福祉税7%というのを作ろうとしました。消費税については、もともと小沢さんは増税派なんですよ。それが今になって反対だと叫んでも、「えっ!」と驚くだけです。
問題なのは、その消費増税の審議に一切出てきていないことです。民主党の会合の中で何か発言したということはありません。6月18日、19日の政調合同会議でも、小沢さんは発言していない。本気で増税を阻止するつもりなら、みずから前に出て言えばいいんです。影響力もありますから。でも、それをやらないから説得力がない。「増税の前にやることがある、と言う前に、アンタがやるべきことがある」と言いたい。
脱原発についても、そもそも脱原発って何だ、ということなんです。民主党が事実上「破棄」したマニフェストに書いてあるのは、二酸化炭素の25%削減。ところが今、原発を停止させると、火力発電をフル稼働させないと電力が間に合いません。そもそも福島第一原発は自民党政権時代に廃炉となるはずでした。ある自民党幹部は「それを維持したのは、民主党マニフェストにある二酸化炭素25%減のためだ」との批判を口にしています。二酸化炭素減と脱原発は相いれないもの。かといって、自然エネルギーの利用システムもまだ整っていません。クリアすべき問題があるのに脱原発とは、いきなり調子がよすぎはしませんか。
小沢さんは消費増税法案採決を巡って、輿石(東)幹事長と3回、会談しました。なぜ3回も必要だったのか。お金の問題を話し合ったからです。つまり、離党ではなく分党できないかを探ったんです。円満分党となれば、所属国会議員の数に応じて、民主党が受け取る今年分の政党助成金のうち、未交付分が分配されるからですね。ところが、話し合いは不調に。お金が入らないことがわかり、決裂しました。
さて、1年生議員が多勢を占める「小沢新党」で、次の総選挙で必要になるのは資金と応援演説でしょう。しかし、お金があるわけでもないし、ベテラン議員の応援といっても、(小沢氏の次に当選回数の多い)山岡(賢次)さんはマルチ商法業界との深いつながりが国会でも批判されたわけで、これはちょっと‥‥。そもそも、「小沢新党って小沢さん以外に誰がいるの?」と聞いてくる有権者もいたほどです。それぐらい、全国的には知名度がない議員が集まっていると言えます。つまり、小沢さん以外に、「顔」となる議員がいない。それもやはり、低支持率、期待度の薄さ、人気のなさの原因でしょうね。
ただ、小沢新党には期待しないといっても、他に期待できる政党はというと「?」ですが。わずかに期待をかけるとすれば、小沢新党に早く消えてもらうことでしょう。