●ゲスト:藤竜也(ふじ・たつや) 1941年、中国・北京生まれ。1962年、日本大学芸術学部演劇学科在学中にスカウトされ大学を中退、日活に入社。同年、映画「望郷の海」でデビュー。1966年、映画「嵐を呼ぶ男」で渡哲也の弟役を演じ、注目を集める。1968年、元日活女優の芦川いづみと結婚。その後、「野良猫ロック」シリーズなどに主演し、アクション俳優としても人気を博す。1972年に日活を退社、フリーになるとテレビドラマにも活躍の場を広げ、1974年のTBSドラマ「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などで、お茶の間に強烈な印象を残した。1976年には大島渚監督のハードコア映画「愛のコリーダ」に出演、大きな話題を呼ぶことに。近年は北野武監督の「龍三と七人の子分たち」に主演し、好評を博した。10月8日より、新宿バルト9ほかで最新出演作「お父さんと伊藤さん」が公開予定。
日活ニューアクションで頭角を現し、以後、多くの映画・テレビドラマで男の色香とタフな魅力を振りまき続ける俳優・藤竜也。常にチャレンジを繰り返す仕事への姿勢、リラックスした素顔にすっかり魅了された天才テリーだが、1つどうしても許せないことがあるらしい!?
テリー 藤さんとお会いするのは、初めてですね。
藤 ええ。でも僕はテリーさん、しょっちゅうテレビで見てますけどね(笑)。
テリー ありがとうございます(笑)。新作の「お父さんと伊藤さん」、拝見しました。今回はまた、かつての藤さんのイメージとはずいぶん違う役ですね。
藤 かつての己のイメージに固執しないようにしてますから(笑)。できるだけ、演技の振り幅は大きくするように心がけています。今回は謹厳実直で律儀なお父さんの役でね。
テリー この映画の話が来た時は、どう思われたんですか?
藤 まずタナダユキ監督が、非常に僕の好きなタイプの映画を撮る方なんですね。女性監督と組むのも初めてだし、共演も上野樹里さん、リリー・フランキーさんという、今ノッてるセンスのいいお二方ということで、これならおもしろいものになるな、と。
テリー 藤さんは、いつも役作りをされる際に、何かやられていることはあるんですか?
藤 僕は、その役の履歴書を全部自分で作るんです。
テリー ええっ、それ、どういうことですか?
藤 例えば、原作小説にこのお父さんが「長野県出身」と書いてありましたから、実際に長野まで行ったんです。で、教育委員会の方に「この年齢の男が子供だった時、小学校はこの辺りにいくつあったか」みたいなことを聞いたり、昔の写真も見せてもらったりして、「この男はガキの頃、こういう山道を通って、こんな風景を見たんだな」と考えたりしてね。
テリー そういう取材は、映画会社に頼むんですか?
藤 いえいえ、そんなこと言わないですよ。自分で勝手に行くんですから。費用も全部自腹です。教育委員会っていうのも、教育関係に詳しい友人と一緒に行ってから、向こうで糸口を探しただけで。
テリー ということは、わりと行き当たりばったり?
藤 そうですね。高校なんかも、それっぽい学校を自分で決めて、OBみたいな顔して校内をふらついたんですよ。いかにも懐かしそうな顔して(笑)。今時の言葉で言うと「プロファイリング」と言うんですかね、それをやるのが楽しいんです。それだと仕事にかこつけて、いろいろなところへ行けるじゃないですか。
テリー ハハハハハ! それはいいですね!
藤 そんなことをしていると、だんだん役が近づいてくるというか、役の気持ちが僕の中にできてくる。そうすると、「よーい、スタート」で、勝手に体が動いてくれるんです。
テリー いや、それはすごいです。藤さんがそこまでするなんて、監督も関係者の皆さんも喜んでくれるでしょう?
藤 いや、僕が気になるのは、「完成した映画を観たお客さんに喜んでもらえるのかな?」って、それだけですから。この作品も、たくさんの人に観てもらえるといいなと思っています。