テリー そうだ、藤さんにお会いしたら、絶対に言いたいことがあったんですよ! これは僕からの文句でもあるんですけど。
藤 それは怖いなァ(笑)、何でしょう?
テリー 僕ね、今までの人生の中で、いちばん好きな女優が(藤さんの奥さんの)芦川いづみさんなんですよ。芦川さんの出ている映画は全部観ています。
藤 僕、テリーさんみたいな人、いっぱい知ってますよ。僕の人生は、そういう人の視線に耐えながら生きる人生なんです(苦笑)。
テリー 僕は当時、芦川さんを“和製オードリー・ヘップバーン”、本当に特別な女優さんだと思ってたんです。
藤 そうですね。自分の女房をほめるのも何ですけど、映画俳優として、僕なんかよりもはるかに上質なものを持っていましたね。僕から(女優を)やめろと言ったわけじゃないけれども、あのまま続けてたらどうなっていただろうな、と思うことはあります。
テリー どうして藤さんは、あんなステキな人と結婚できたんですか?
藤 それは僕にも説明できません。そこが男と女の不思議なところですよね‥‥かつて松田聖子さんが「ビビビッときた」なんてうまいこと言っていましたけど(笑)、まさにそういう感じでして。
テリー さぞ周りからは嫉妬されたでしょう?
藤 そりゃすごかったですよ。撮影所の中でも、誰も口きいてくれなかったからね(笑)。
テリー ハハハ、やっぱりそうだよなァ。
藤 でもそれは逆に、エネルギーになりましたよ。僕が役者としてちゃんとしないと、「ほら、藤なんていう、どこの馬の骨ともわからないヤツと一緒になるから」って女房が言われちゃいますから。
テリー なるほど。周りからのプレッシャーをバネに変えたんですね。
藤 あと女房も、ちゃんと覚悟を持ってくれていたんだと思います。昔の映画会社の俳優なんていうのは、今と違って「遊ぶことが芸の肥やしだ」みたいな感覚がまかり通っていましたから。女房は僕が何をやっても、「必ず何かの足しになるだろう」と思ってくれていたんだと思います。
テリー 最高の奥さんですね。
藤 そうじゃなければ、僕なんかチャランポランで、ひもがなかったらどっかに飛んで行っちゃうようなタイプの人間ですから。ここまで僕がやってこれたのは女房のおかげ、というのはありますね。
テリー 今、芦川さんはどうなさってるんですか?
藤 元気ですよ。ただ、僕より6歳年上なので、そろそろ心配にはなっているんですよ。だから最近、寝る前に家内と一緒に「跳ばないマサイ族」っていうのをやっているんですよ。
テリー またいったい何ですか、それ(笑)。
藤 家内と握手して、マサイ族みたいにジャンプはしませんけど、膝を曲げ伸ばしするような感じの縦の動きを50回やってから「おやすみなさい」をする。
テリー それは何か意味があるんですか。
藤 まあ、軽い運動なんですけど、お互いもう年ですから、明日無事に起きられるかどうか、わかりませんからね。そういう意味もあって、2人で毎日やってるんです。
テリー いいなァ、芦川さんと仲よさそうで、本当にうらやましい! 最後に、今後のお仕事で何か目標はありますか?
藤 いえ、特にありませんね。いただいた仕事1本1本を全力でやる、その繰り返しですから。
◆テリーからひと言
初対面だったけど、やっぱり魅力的な人だなァ。仕事をガツガツやってるばかりじゃなくて、どこか余裕があるんだよね。俺も見習わないと! またゆっくり、お話を聞きたいね。