テリー 当時の東映京都撮影所って、どんな雰囲気だったんですか?
片桐 俺が入った頃はまだ片岡千恵蔵さん、嵐寛寿郎さんがいましたからね。すごかったですよ。
テリー おふたり、どんな印象でしたか?
片桐 いや、わからないです(笑)。俺みたいなペーぺーが話せるような存在じゃなかったですから。
テリー じゃあ、当時は高倉健さん、鶴田浩二さんの全盛ですけど、こちらは?
片桐 もちろん仕事では何度もご一緒させてもらっていますけど、同じような感じでしたよ。健さんは、TBSで倉本(聰)さん脚本の「あにき」っていうドラマをやった時に楽屋に挨拶に行ったんですけど、やっぱり恥ずかしくて話せなかったですねェ(笑)。
テリー ハハハ、健さんもしゃべらないしね。
片桐 そう。鶴田さんともほとんど話したことはないけど、いつも完璧にセリフが入ってる人でした。
テリー すごいなぁ。そういう人って多いんですか?
片桐 いや、丹波(哲郎)さんは全然覚えてこないから、よく鶴田さんに「丹波、いいかげんにせえよ!」って怒られてました(笑)。でも、俺の知るかぎりでは、鶴田さんを「鶴田」って呼び捨てにしてたのは、丹波さんだけですよ(笑)。
テリー マイペースだなァ、霊界の人だから関係ないんでしょう(笑)。
片桐 「Gメン’75」に俺が犯人役で出た時、丹波さん、助監督に「これ、どんな話なんだ?」って聞いていましたから(笑)。恐らく台本はちゃんと読んでいるんでしょうけど、わざとそういうことをするんだと思うんです。
テリー なるほど、そうやってカマして、現場を自分のペースに持っていくんですね。文太さんは、僕の印象では、何となく気難しいイメージがありますけど。
片桐 いや、そんなことないですよ。俺らが主役クラスと一緒に飲みに行ったりできるようになったのは、文太さんくらいからなんです。あのまんまの人なので、全然緊張もしなくて。
テリー へぇ、健さんたちと何が違ったんですか?
片桐 何でしょうね。やっぱり、深作さんが「仁義なき戦い」で京都に来るようになってから、一気に撮影所の雰囲気が変わって、上下関係みたいなものがなくなったんですよ。深作さんは、ベテラン・新人関係なく、みんなに分け隔てなく接するから、そこでみんなとの距離が近くなりましたね。
テリー 結局、京都での生活はどのぐらい続いたんですか?
片桐 確か27歳ぐらいまで、約6年ですね。76年に「狂った野獣」っていう映画で演じた犯人役が注目されたみたいで、以後は東京のテレビドラマへの出演が多くなりまして。
テリー 石原プロの刑事ドラマにもよく出てらっしゃいましたよね?
片桐 そうですね。俺、日本の俳優さんの中では、渡(哲也)さんがいちばん緊張するんですよ。
テリー あ、それ、すごくわかりますよ! 僕も前に渡さんとお話しさせてもらう機会があったんですけど、僕に対してずっと敬語でしゃべるんですよ。あれ、ものすごいプレッシャーだったなァ。
片桐 そうそう、逆に緊張するでしょう? 渡さん、すごく気を遣ってくれるから、失礼があっちゃいけないと思うと、何もしゃべれないんです(苦笑)。
テリー ハハハ、片桐さん、そんな話ばかりじゃないですか!