11月19日から東京ステーションギャラリーで故・高倉健さんの追悼特別展「高倉健」が開催される。この展覧会では出演映画205本の見せ場が流され、貴重な遺品も展示されるというのだが、会場が東京駅というのもファンの間で話題になっている。「駅 STATION」(81年)、「鉄道員(ぽっぽや)」(99年)など健さんと鉄道には切り離せないイメージがあるからだ。
その一方で、「駅 STATION」で健さんが倍賞千恵子演じる居酒屋の女将と出会う北海道留萌線の増毛駅が、12月4日の運行をもって廃駅となることが決まった。根室本線も廃線が検討されており、「鉄道員(ぽっぽや)」で幌舞駅に見立てて撮影された同線の幾寅駅も廃駅の危機にある。幾寅駅は映画の撮影のために木造駅舎として改修され、そのままの状態で駅舎が残っているため、鉄道ファンと映画ファン双方から「可能なら残してほしい」という懇願の声が上がっている。
「かつて『鉄道員』の降旗康男監督は、『この映画で、高度成長期の日本で黙々と働き、いつしかその波に取り残されてしまった男の怒りを描きたかった』と語ったことがあります。作品中、健さん扮する幌舞駅長の佐藤乙松が吉岡秀隆演じる親友の息子から廃駅決定を電話で伝えられるシーンがあるのですが、健さんから『電話が終わった後に周りの机や椅子をぶち壊して怒りを表現したい』と提案があり、降旗監督は『無念の思いを込めて、被っている駅長帽をそっと机に置くようにしてくれ』と言ったそうです」(映画ライター)
「鉄道員」の公開から17年。劇中の駅舎の運命は現実のものになりつつある。健さんがご存命だったら、この状況に、やはりそっと駅長帽を机に置くのか。それとも怒りを露わにするのだろうか。