妻を殺害した容疑で1月10日に逮捕されたのは、出版最大手、講談社のエリート社員だった。09年に「別冊少年マガジン」の創刊メンバーとして、空前の大ヒット作「進撃の巨人」を世に送り出し、昨年6月からは漫画誌「モーニング」の編集次長として辣腕を振るった男の「異変」とは──。
東京都文京区にある一軒家から「自宅の階段下で妻が倒れている」と119番通報があったのは、昨年8月9日の午前2時40分頃。妻は約1時間後に搬送先の病院で死亡した。この電話の主こそが、夫の朴鐘顕(パクチョンヒョン)容疑者(41)だったのだ。全国紙社会部記者が説明する。
「朴容疑者には当初から疑いが持たれていました。司法解剖の結果、佳菜子夫人(38)の死因は窒息。首には絞められたような痕があった。当初、警察に説明を求められた朴容疑者は『階段から落ちた』と話していましたが、その後、『妻は階段の手すりにかけた(朴容疑者の)ジャケットで首をつって自殺した』などと変遷。ジャケットからは、佳菜子さんの皮膚片などのDNA型は検出されませんでした。一方で、1階の寝室のマットレスからは、佳菜子さんの尿成分や、血が混じった唾液が検出された。外部から何者かが侵入した形跡もないことから、警視庁は、朴容疑者が自殺に見せかけるために虚偽の説明をしたと見て、5カ月間の捜査の末、逮捕に至りました」
朴容疑者は逮捕後の取り調べに対して容疑を否認し、黙秘に転じた。朴容疑者の友人は、「4人の子供の教育方針を巡って、夫婦仲に大きな亀裂が生まれていた」と証言する。
「子供のために姓を変えたほうがいいと考える奥さんに対し、韓国籍の朴容疑者は朝鮮学校への進学も想定して応じないなど、モメることが多かった。小学3年生の長女の中学受験は、特に大きな問題でした。奥さんは昨秋からの塾通いを提案する熱心さでしたが、朴容疑者は難色を示し続けていた。『1人に中学受験を認めると4人全員することになる。子供の年が離れていないので、10年以上休みなしで塾通いに奔走させられるのは時間的にも精神的にも厳しい』と漏らしていました」
そうした状況を裏付けるかのように、自宅の近隣住民は、こう明かした。
「昨年7月中旬、深夜に『何で叩くのッ!』という奥さんの叫び声が聞こえてきました。事件直後から『奥さんは旦那さんに殺されたんだわ』と噂になっていましたね」
講談社社内でも、不可解な現象が起きていた。講談社関係者が明かす。
「親族が亡くなると社内に掲示され、社内報にも掲載されるんですが、この件は一切、載りませんでした。『モーニング』の編集部員に知らされたのも、1カ月ほどたった頃。編集会議で『奥さんが亡くなった』と上長がひと言触れただけでした」
朴容疑者の焦燥は、警察の捜査が進む中で、講談社幹部にも何度も呼ばれて事情を聞かれたことからも伝わってきたという。
「妻の精神的不調を主張し、事件への関与を否定していました。『残された子供を守らなくてはいけないんです』と強く訴えていた。(社内事情聴取から)戻ると、疲れきった様子でした」(講談社コミック関係者)