先日、「日本の性行為がない夫婦は47%」という調査結果が発表されました。日本家族計画協会によると、日本人夫婦の約半数が、1カ月以上性交渉をしていないそうです。
調査は昨年の10月から11月にかけて無作為抽出した男女3000人を対象に行われました。性行為がない夫婦の割合は2年前より2%上がったそうです。
「性行為に積極的になれない理由」として、男性は「仕事の疲れ」が最も多かったそうです。男性の性欲は年を重ねるにつれ衰えていくため、納得の理由ですが、中には「EDだから」「勃起力が衰えてきたから」という人も少なくないでしょう。
EDの克服法としてはバイアグラなどの勃起薬が知られていますが、ここで問題です。EDの人が久しぶりに性行為をしたい場合、勃起薬は使うべきでしょうか、それとも使用を控えるべきでしょうか。
結論から言えば「心臓や血圧に病気がなく、使い方を理解していれば大丈夫」となります。
勃起薬の代表薬でもあるバイアグラは本来、血管を広げる心臓の薬です。血管が広がると心臓は楽になるはずですが、バイアグラを使った場合、血管を広げすぎて血圧が下がることがあります。
その副作用には「顔のほてり、紅潮」「頭痛」などがあり、過去に心臓発作や脳出血で倒れたことのある人が服用すると、処方されないケースもあります。狭心症の治療でニトログリセリンを服用している人が、バイアグラを併用すると血圧が急に下がり死に至ることもあります。
高血圧の男性が久しぶりのセックスで興奮したり、イキそうになるのを我慢すると、血圧は上がり心臓の負担が増えます。それは脳出血や脳卒中のリスクを高めることになります。
つまり、こうしたリスクを理解したうえで使用すれば大丈夫なのです。
バイアグラの服用そのものが危険というよりは、心臓や血圧に持病を抱える人が、バイアグラを飲んで久しぶりに勃起したため、「長いことごぶさたにもかかわらず、激しいセックスをしてしまう」ことが危険なのです。
例えれば、ふだんまるで運動をしない人が新品のシューズを買い、うれしさのあまりサッカーをするようなもの。バイアグラが死に至らせるのではなく、勃起したうれしさのあまり、激しいセックスをして心臓に負担がかかるわけです。
他人を本気で怒ると血圧は上がりますが、セックスでの興奮も同じ状況です。頭や胸が重かったり痛かったりしたら、激しいセックスは控えてください。大抵は気のせいだ、飲みすぎだ、などと自分をごまかしますが、自覚症状を感じたらストップすることです。動脈硬化や高血圧などの症状を抱える人が、頭痛や息切れ、極端な速い動悸などを感じたら黄信号。タバコやお酒が好きな人やメタボの人は気をつけるべきです。
勃起薬を服用した場合、予期せぬ症状が起こることもあります。例えばバイアグラの効果が続くと「持続性勃起」となり、射精後も長時間しぼまなかったり、血液の循環が悪すぎて亀頭の周りが膨れたりします。指先をゴムできつく縛り続けたような状態です。あるいは、女性の膣内でこすり続けた結果、傷ができて傷口から雑菌が入ることもあります。
若い人ならまだしも、年齢を重ねたら「自分が興奮するのではなく、女性を興奮させる」セックスに切り替えるべきでしょう。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。