もちろん、選手の間でもドタバタ劇が。チームを引っ張る中田が慌てたのは、開幕戦前、首からブラ下げている金色のネックレスがプツンと切れるという不吉な事件が起きたからだ。
スポーツライターがあとを引き取る。
「こういうのを気にするタイプの中田は焦っていましたが、菊池涼介(27)がすぐにおそろいのネックレスをプレゼントした。すっかり気をよくした中田はそのあと3連発です」
これはゲン担ぎ的な余談だが、菅野は日頃から親しいメディア関係者が黒い服で取材をしているのを見かけると、「勝利の白星につながる白を着て来てよ」とお願いしていたとか。
強化試合では評論家が入れ代わり立ち代わり訪れたが、最も声をかけられるのは中田。衣笠祥雄氏(70)に突然、手取り足取りの熱血指導を受けたり、立浪和義氏(47)にアドバイスを受けたりしていた。
「次から次へとアドバイスを受け、かなり混乱していたようです。そこで取った方法が『来た球を打つ。ストライクをフルスイング』という開き直り。それで結果を出しました」(WBC関係者)
WBCという国際イベントならではのトラブルも勃発した。
プロ野球のシーズン中は、試合前のケージ裏に評論家が入り、監督やコーチから事前情報を集めるのが日常的な光景だが、WBCは大会規定で「ライツホルダー」(放映権を持つ局やスポンサーなど)しか制限ゾーン内へ入れないことになっている。放映権を持たない社の取材証では近づけないのだ。そんな事情を知らない評論家は次から次へとセキュリティに追い出され、現場はパニックに。立浪氏や宮本慎也氏(46)らが容赦なく追い出され、松中信彦氏(43)は旧知の小久保監督に挨拶しようとケージ内に入ると、「お前、入れないぞ」と小久保監督に追い払われてムッとするシーンも。
その一方で、ネット裏では激しい情報戦が繰り広げられていた。強化試合の段階からメジャー30球団のスカウトが勢ぞろい。4、5人のチームを組んで来日している球団まであった。前出・スポーツライターは、
「WBCは最高の品評会。メジャー公式球に近い球を使い、マウンドもメジャー仕様なので、通用するかどうかを正しい物差しで計れるからです」
スカウトの中には、日本ハムや楽天で活躍したカブスのセギノール氏(42)や、パドレスとフロント契約している斎藤隆氏(47)の顔まであった。
「ズバリ、彼らが狙っているのは、投手では菅野、千賀滉大(24)、藤浪晋太郎(22)。野手では筒香嘉智(25)です。とりわけ、ほぼ3Aで固めたイスラエルをキリキリ舞いさせた千賀には『今キャンプに来ていたら、即メジャー昇格するだろう』というスカウトまでいました」(代理人関係者)
ドタバタパニックを乗り越えて侍の力量を世界で証明すれば、その先にメジャー行きという副産物も待っているのだ。