前評判を覆す全勝突破でロサンゼルスに乗り込んだ侍ジャパン。優雅に浮かぶ白鳥は水面下で必死に足をバタつかせているものだが、代表ナインもまさにその状況だった──。テレビ中継には映らない「ベンチ裏パニック」を、地獄耳の特別副音声で実況レポート!
小久保裕紀監督(45)はお立ち台で涙をこらえるのに必死だった。小久保監督が「死闘」と表現した、3月12日の2次ラウンド初戦のオランダ戦。延長11回にタイブレークを制した苦しい試合だったが、実はブルペンでパニックが起きていた。WBC関係者が言う。
「1次ラウンドを終えて、小久保監督がマスコミに『ストッパーは牧田(和久=32=)』と断言したことで牧田も8回から準備していたんですが、突然、8回にベンチ裏から権藤博投手コーチ(78)が現れ、9回は則本昂大(26)でいく、と告げたんです。則本も牧田も口アングリ状態でした」
案の定、準備不足の則本は二死を奪いながらタイムリーを浴びて、同点にされてしまう。その後、牧田が2回を抑え、中田翔(27)の決勝打が出て試合には勝ったが、「ベンチの継投ミスを選手が助けた」という試合だった。スポーツ紙デスクによれば、
「投手起用は権藤さんが全て決めている。則本のような三振の取れる豪腕が好きなんです。本来は準決勝、決勝に進んでからの則本ストッパーが秘策でしたが、『この展開では確実に勝ちにいきたい。オランダみたいなメジャー勢ぞろいの打線には則本だろう』と急に思いついたようなんです」
試合後、報道陣に則本起用の理由を突っ込まれた小久保監督は「理由はないです」と、とんでもないコメントを残した。それもそうだろう。小久保監督は何も知らないのだ。これには中継スタッフも苦笑しきりで、
「2人に意思疎通がないんです。マネージャーが間に入って、何とかつないでいますが。『ストッパーは牧田』発言にしても、その同じ日に権藤コーチが『ストッパーは決めていない』と、まるで違う答えをしていましたから」
実際、大会前から、権藤投手コーチは迷走していた。
「実は菅野(智之=27=)に『抑えをやってくれ』と打診していたんです」
こう明かすのは、巨人の球団関係者である。
「先発だとばかり思っていた菅野は突然の事態に困惑し、球団に相談しました。結果、巨人を巻き込んでひと悶着起きることになった。巨人にとっては、先発で使ってもらい、準決勝で投げ、十分な間隔を空けて開幕で投げてほしい。ところが抑えとなると頻繁に投げる可能性が高く、決勝に進めばそこでも登板することになるかもしれない。そうなると開幕登板に響くと考えたのです。だから巨人は権藤コーチに『それはやめてもらえませんか』と抗議し、最終的にこの話はご破算になりました」
菅野も巨人もホッと胸をなで下ろしたことだろう。