映画における“初体験”の適齢期は、やはり十代半ばが圧倒的。映画賞を総なめにした「サード」(78年、ATG)の森下愛子(58)も、女子高生が学校内で喪失、という設定がひときわ光る。
森下演じる愛称「新聞部」は、同じ高校の「サード」(永島敏行)と図書室にいる。下を脱いだ永島に、森下は言う。
「ふうん、こんなになってるの。触っていい?」
股間をいじられて欲情した永島は、図書室で森下を押し倒す。ただ、お互いが未経験なため、ここでは失敗に終わる。
それから数日後、新聞部の部室でイスに座った永島に、森下が下だけ脱いで上にまたがる。小さなうめき声を上げ、イスを使った騎乗位で念願の初体験を果たすが、秋本氏が解説する。
「この当時の森下は、ふくよかな乳房ももちろん魅力だが、陰りのあるせつなげな表情がよかった。若い女が1度は通過する儀式を、ドラマチックに演じることができる女優だった」
同じく高校を舞台にしながら、よりハードなのが関根恵子(62)のデビュー作「高校生ブルース」(70年、大映)であろう。体育館の倉庫で、同級生の男と向かい合い、ブラを外す。そのまま初体験へとなだれ込むが、ここから悲劇が重なってゆく。
「お願い、殺して!」
妊娠したことを知った恵子は、恋人に足で腹を踏んでもらうよう懇願する。荒療治によって中絶に成功した恵子は、また晴れやかな顔で学校に戻ってゆく。
関根は当時15歳。衝撃的なデビューであり、以降、7作連続でヌードありの主演作が公開された。
実際に起きた事件を題材にしたのは「完全なる飼育」(99年、東京テアトル)で、小島聖(41)が重量感に満ちた乳房を見せている。
女房に逃げられた男(竹中直人)は、ジョギング中の女子高生(小島聖)をアパートに監禁する。激しく抵抗する小島だが、ある考えのもとに竹中にこう提案する。
「さっさとレイプしなさいよ。それが済んだらここから出しなさいよ!」
だが竹中は「処女か?」と聞き、小島が「処女よ」と答えると、冷静に言い放つ。
「心と体が結ばれた完全なセックスがしたいんだ」
奇妙な監禁生活は、やがて小島の心と体に変化をもたらし、ついに2人は結ばれる。
「もっと‥‥して! ねえ、お願い、ちょうだい」
ロストバージンの激痛もつかの間、激しく乳房を揺らしながら求める小島の表情が生々しかった。
さて、高橋洋子(63)が女優としての地位を確立した「サンダカン八番娼館 望郷」(74年、東宝)も名作である。明治時代に、天草からボルネオに娼婦として売られていった「からゆきさん」を題材にしたものだが、高橋は田中絹代が回想で語る若き日のからゆきさん・北川サキを演じている。
高橋はNHKの朝ドラ「北の家族」(73年)でヒロインを演じた直後。熊井啓監督が直々に出演交渉に来たと本人が明かす。
「朝ドラが終わりに近づいた頃、監督が撮影所に訪ねて来られて、1対1で話しました。こういう映画で、もちろんヌードもありますが、大丈夫ですかと聞かれました。監督は私しかいないという感じで説明されたので、私も喜んでお引き受けしました」
朝ドラヒロインが直後にヌードになるのは、当時としては異例のことだった。そして作中での高橋は、貧しい少女としてボルネオに売られ、下働きを経て、ついに遊女として客を取る場面を迎える‥‥。
青白く異様な表情のボルネオの屈強な現地人が、高橋をベッドに放り投げる。泣き叫んだところで助かるはずもなく、男が前戯もないまま強引に挿入。
高橋がこのシーンを昨日のことのように振り返った。
「あのボルネオ人を演じていたのが、無名時代の苅谷俊介さんだったって、ずいぶんたってから本人に聞かされましたよ。あのシーンは私の顔のあたりで、その男のキーネックレスがずっと揺れているんです。あれは、私たち娼婦が“鍵”で閉じ込められているという熊井監督流の暗喩だったんでしょうね」
屈辱の初体験を終えた高橋が、どしゃ降りの雨の中を飛び出し、裸体を洗い清めるシーンも印象深い。