投げては165キロ、打ってはバックスクリーン直撃弾と、野球漫画の主人公を彷彿とさせる活躍で魅せてきた大谷翔平。WBC欠場を余儀なくされたケガを負った現在、バット一本で勝負しているが、想像以上の数字を残している。はたして打者・大谷の可能性はどこまで広がるのか──。
さるスポーツ紙デスクが苦笑いしながら、大谷翔平(22)に対する異例の厚遇を打ち明ける。
「たとえ日本ハムが負けたとしても、ホームランでも打とうものなら翌日の野球面は大谷中心ですよ。対戦球団は勝つだけでなく、大谷も抑えなくては紙面を飾れません。すでにパ・リーグの別球団担当記者からは、『他の選手のコメント取ったって、大谷が活躍しちゃあね』と嘆く声が聞こえてきます」
球春の到来とともに、打者・大谷がエンジン全開である。開幕3連戦は12打数8安打で打率6割6分7厘。1本塁打を含む4本の長打を記録している。打率、本塁打ともにリーグ2位(4月7日時点、以下同)につけているが、中でも圧巻なのが長打率だ。2位に1割以上の差をつける9割5分7厘で、シーズン60本塁打を放った13年のバレンティンが記録した7割7分9厘をはるかに凌駕している。
しのぎを削る選手たちから見ても、大谷が打者に専念すればここまでの活躍は想定内だったというが、そればかりか、昨シーズンから一流選手たちがはやばやと“白旗”まで揚げていた。
「昨年7月、オールスターで行われたホームラン競争で、大谷は1回戦で山田哲人(24)、決勝戦で柳田悠岐(28)という、2人の『トリプルスリー』と対戦しました。本数だけ見れば僅差で大谷が勝利した形ですが、ヤフオクドームのバックスクリーンに平然とぶち込む弾道や飛距離といった“質の違い”に、山田と柳田がともに『あんなのに勝てるわけがない』と自信喪失したほどです。こうした話も広がり、今では対戦球団の選手たちがアップの手を止めてまで大谷のフリーバッティングを遠巻きに見つめています」(球団関係者)
入団当初から二刀流を掲げ天才打者の片鱗を見せていたとはいえ、5年目にしてすでに貫禄十分である。
「僕が対戦した時はまだつけいるスキがあったんですが、覚醒しましたね」
こう驚きを隠せないのは、13年の大谷のプロ入りから15年オフまで楽天のコーチ、監督として対戦した経験を持つ、デーブこと大久保博元氏だ。
「監督の時は『投手・大谷』のほうが嫌でしたね。大谷と当たらないことを祈っていたほど。とはいえ、ローテーションですから、嫌でも当たる時は来る。そのたびに『もうどうにもなんねぇな、これ』というところから対策を立てねばなりません。狙い球をしぼる“超消極的野球”を強いられたのは、大谷とダルビッシュ有(30)ぐらいでした」
一方で、打者として当時はまだ対策を講じられる範囲内だったという。
「ファールを打たせてカウントを整えることができましたし、内角の球には差し込まれてレフトフライというケースが多かった。ところが、最近は差し込まれた打球をホームランにできるようになったんです。監督当時(現役時の自分と比べて)、内角の打ち方なら勝てるかなぁとも思っていましたが、モノが違いました。大谷のほうが打者としてはるかに上です」(大久保氏)
その急成長ぶりに脱帽するばかりである。