そもそも大谷の今オフ移籍には、大きな障害が発生していた。昨年末にMLB(米メジャーリーグ機構)がメジャー全30球団に対し、新労使協定の海外選手獲得規定が適用されることを通達。その新協定には、25歳未満の海外選手獲得に費やせる契約金の総額が年間で最大500万ドル(約5億5000万円)に制限され、マイナー契約しか結べないとも明記されているのだ。
今オフ移籍なら、今年7月に23歳を迎える大谷は新協定が適用されることになり、その契約内容は市場価値で獲得総額が2億ドル(約220億円)と見られていた相場から、ストップ安並みの大幅下落となってしまう。
「でも大谷は今年に入ってメジャー移籍について『USAトゥデイ』(米全国紙)の取材に対し『お金の問題じゃない』と明言しています。母校の恩師で花巻東高校・佐々木監督から『自分の教え子がいつかメジャーでプレーする姿を見せてほしい』と高校時代より言われ続け、感化されてメジャー挑戦を決めた経緯があり、とにかく本人はお金より1年でも早く夢を実現したい気持ちが強いんです。日ハムにとっても、今オフに大谷をポスティングシステムで移籍させる際、獲得球団から入ってくる譲渡金の最大設定額2000万ドル(約22億円)は新協定適用に影響されず、変わりません。だから日ハム側としては、大谷が“傷物”になったことでなるべく早く、若いうちにメジャーへ行かせ、商品価値が下がらないようにしたいという思いは強まっているはずです」(別のメジャー球団極東担当の日本人スカウト)
「USAトゥデイ電子版」に掲載された「MLBで最も影響力のある100人」で、大谷は日本人で唯一となる47位にランクイン。ケガを負ったとはいえ、注目度の高さはまだまだ衰えていない。日本ハム側が危惧する最悪のシナリオは、大谷のケガが予想以上に重く、メジャー移籍が不可能となることだ。仮に「ご破算」となれば、入団当初から二刀流育成法で入念に練り上げてきた大谷の成長プランは全て台なしになってしまうからだ。
「大谷の実戦復帰は、打者として少なくとも6週間、投手としてはそれ以上かかる。ところが栗山監督は、また打者のみとして6週間で復帰させる意向だといいます。同じ過ちを繰り返さなければいいのですが‥‥」(球界関係者)
はたして大谷は、今シーズン終了後に笑顔で海を渡ることができるのか──。全責任を被った栗山監督も大谷の超人的な回復を今、心底願っているに違いない。