2カ月程前、殿とこんなやりとりがありました。
「今度よ、保険のCMに出んだよ」
「保険ですか? えー!(殿と保険との組み合わせがどうにもピンと来ず、ついオーバーなリアクションをとってしまったのです)」
「俺、昔よ、『人生に保険は要らない』みたいなこと言ってたろ」
「はい」
「だからよ、『人生は保険だよ。いい年して保険の1つも入らないでどうすんだ。お前ら、すっかり昔の俺に騙されやがったな』って、最近のたけしが言ってたって、お前のアサ芸(殿は当連載のことを毎度“お前のアサ芸”と言います)に書いとけよ」
もちろん、殿特有のリップサービスが多分に含まれている発言であると思うのですが、にしても、70歳を目前にした近年の殿は、過去に方々で言い放った、自身の考え方や見解を撤回されるような発言が著しく増えています。
「若い奴がスマホなんかをいじってる姿見てると、時間を無駄に使ってるように思えてしょうがねーけどな」
なんておっしゃっていた殿が、今じゃすっかり、“スマホ大好きっ子”であり、楽屋に入るとすぐさまスマホを手に取り、ラインだのメールだのと、忙(せわ)しなくいじくり倒しています。
まー熱しやすく冷めやすい殿の性格ですから、スマホブームも一過性のものだと思うのですが‥‥。
それはさておき、昨今の“過去の発言撤回ぶり”は目に余ります。
つい先日、殿がとある番組のロケにて、入居するのに最低でも数億円はかかると言われている、都内にある超高級老人ホームへ足を運んだ時のこと──。
その老人ホーム、豪華とは聞いていましたが、実際に見学してみると、「ここはリゾート地の5つ星ホテルか!」と叫ばずにはいられないほどの絢爛豪華ぶりで、設備もケアも、まったくもって“抜かりなし”といった、大変すばらしい施設でありました。
そんな老人ホームを見て回った殿はしみじみと、
「やっぱりあれだな。若いうちにちゃんと金稼いで、残しておかなきゃダメだな。ジジイになって金なくてよ、小さなアパートで1人で過ごすのと、ここで過ごすのとじゃ大違いだな。あーよかった。俺は金稼いでおいて」
そう感想を漏らすと、ロケを終え帰っていかれたのでした。で、殿と別れたわたくしは、帰り道、〈確かに殿が言っているとおりだな。俺なんか稼いでないから老後が不安だわ〉と、少しばかり、自身の晩節について心配を募らせだしたのです‥‥が、ふと思い出したのです。そういえば殿は昔、何かのインタビューで、
「ジジイになったら金なんか残さねーで、中野あたりの汚ねー4畳半のアパートでよ、1人でくたばるのが夢だな」
なんて語ってなかったっけか!?
とにかく 昨今の殿、ブレブレです!
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!