入店まもなく出会った客が、色黒で体格のいい、土建業者の奥さんだった。彼女に引っ越し費用50万円を出してもらい、兄のもとから独立する。
「ナイトロイヤル」入店4カ月目に、元東映女優で新宿でクラブを経営するママが、関根氏を梅宮辰夫と間違えて声をかけてきた。よほど当時は似ていたようだ。それがきっかけで、最初の客ができた。3カ月間の名刺配りも実を結び始め、100人以上のホストの中で、早くもNO5にのし上がった。
ところがNO5になって間もなく、関根氏はクビになる。理由はいろいろあったようだが、
「生意気な態度が問題だったのでは、と思っています。相変わらずケンカっ早く、アヤをつけてきた先輩ホストを殴り倒したこともあったから。ホストの世界は妬み、だまし、誹謗中傷、足の引っ張り合い。ほんとに醜い世界ですよ」(関根氏)
関根氏のケンカは、店に来たヤクザとも絶えなかった。関根氏はれっきとしたカタギなのだが、唯一、兄弟盃を交わしたヤクザがいる。「夜の帝王」開店後のことだ。極東桜成会の池田会長が何人かと飲みにやって来た。そのうちの1人と言葉の行き違いから険悪になり、会長が帰ったあとに決着をつけることになった。その相手というのが、当時、極東桜成会のNO2だった岩崎勇次氏。周囲の必死のとりなしでその場は収まったが、関根氏はこう述懐する。
「とんでもない人と、コトを構えるところだった。あの時やっていたら、今の自分があったかどうか」
一方の当事者、岩崎氏も当時の関根氏について言う。
「筋を通す男。ホストにしておくのが惜しい男だった」
池田会長の強い勧めで盃を交わし、兄弟分になった2人は、今も交流を続けている。
「ナイトロイヤル」をクビになった関根氏は、新宿の「ナイトシャルマン」に移る。この店ではすぐNO1になった。さらに1年後、引き抜かれて「銀座ナイト」に移る。この店でも関根氏はトップだった。
プロ野球時代にも女性関係は派手だったが、ホスト稼業でさらに拍車がかかった。一流企業の社長夫人、歌手、女優、モデル、アイドル歌手、女性実業家、銀座のママ、一流クラブのNO1ホステスなどなど。
危ない「鉢合わせ」の経験もある。東映の二枚目スターとつきあっていた女性客との「アフター」後の明け方、彼女のマンションでの「ソノ最中」にチャイムが鳴った。スターの突然の来訪だった。
「すばやく服と靴を手に、パンツ1枚でベランダに隠れたんだが、彼女はかなり酔っているそのスターとベッドインしてしまった」(関根氏)
笹川伸雄(ジャーナリスト)