インターネット上で個人間での商品の売買を可能にしたオークションサイト。もちろん、何でも出品していいわけではないが、やはりとんでもないシロモノも登場する。その裏には、悪徳ユーザーと運営スタッフとの暗闘があったのだ。
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業界最大手の「Yahoo!オークション」がサービスを開始したのは、13年前の99年。以降、ネットオークション業界は拡大を続け、現在では楽天オークションやモバオクなど複数のサイトが存在する。どのサイトも出品者が落札金額から数%の手数料を運営業者に支払うシステムのため、落札者は商品を安価で入手でき、きわめて利便性の高いサービスと言える。
だが、オークションサイトにとって、やっかいなのは、予想外の出品物の取り扱いだった。本誌にその舞台裏を語ってくれたのは、以前、大手オークションサイト運営会社のスタッフとして実務に当たっていたA氏。
「サービス開始当初はまるで違法商品の見本市のようでした。現在では出品者の本人確認システムが確立し違法出品は減ったようですが、それでも無法地帯と言っていい。24時間態勢で出品物をチェックしていましたが、違法商品を消しても消しても追いつかない。一日の削除数が数千件を超えることもありました」
いったいどのような違法商品が出品されていたのか。A氏が続ける。
「最も多かったのは裏DVDですね。『流通している裏DVDリスト』を作成、運営チーム内で共有していました。大麻やマジックマッシュルームなどのドラッグも多かった。それらは見つけしだい警察に通報していました」
出品者とのいたちごっこの様相だが、運営側もただ「危険物」に手をこまねいているわけではない。膨大な量の違法出品を監視する方法として、「極秘のキーワードが設定されていて、それに引っ掛かった出品物を自動的にチェックするシステムを構築していました。例えば裏DVDの場合、リストにあるタイトルに加え、『モザイク 無し』といったように商品説明を予測して検索をかけていたんです。このパトロールにあたっては、極秘の分厚いマニュアルがあり、キーワードも含め、今も日々、更新されています」
中には、スタッフがモニターの前で驚きの声を上げるような出品物もあった。
「拳銃のトカレフを見つけた時は驚きましたね。商品説明には『弾の追加販売も可能』と書いてある。もっとスゴイのが『殺人請負』。これは『80万円即決で指定の相手を殺害します』という内容なんですが、発見した時は社内が大騒動になりました」
何とも物騒な取り引きが横行していたようだが、違法出品のバリエーションはまだまだ多岐にわたる。
「レッサーパンダの剥製が海外から出品されたこともありました。ワシントン条約に引っ掛かるんじゃないかということで削除しましたが、出品当初はスタッフの誰も、これが違法と気づきませんでした」
法律的には取り引きが合法でも、社内のガイドラインに照らし合わせて削除する商品もあるようで、
「山口組のバッジは倫理的に問題があるということで、途中から削除対象になりました。実は、これが非常に人気の高い商品で、15万円前後の価格設定で飛ぶように落札されていたんです。いったい何に使うのかと、スタッフの間でも話題になりました。タイムマシンが出品された時は、2億円まで値がつきましたね(笑)」
ネットオークションは、「現代の闇市」なのである。