東洋一の歓楽街・新宿歌舞伎町が「凶悪化」しているという。浄化作戦と規制強化で消えたはずのボッタクリが、長引く不況のせいなのか復活しているというのだ。歌舞伎町にどんな“異変”が起きているのか。
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「今の歌舞伎町はボッタクリ天国ですよ。まともな客引きなんて、ほとんどいない。警察も手を焼いており、悪質な客引きたちはやりたい放題です」
こう語るのは、かつて歌舞伎町のボッタクリ「ポン引き組織」元幹部のA氏だ。
A氏は過去の悔恨も込めて、現在の歌舞伎町の危険な実態を明かし始めた。
「歌舞伎町には今、約1000人のポン引きがおり、1日当たり500人くらいが街に出ています。彼らは8つのグループに分かれていて、それぞれに“ケツモチ”がいる。客引きは1人当たり毎月3万円から10万円をケツモチに支払います。仮に10万円を毎月1000人が支払ったら1億円です。どれだけボッタクリが横行しているかがわかってもらえるでしょう」
A氏の話によれば、グループとはいえ緩やかな連帯関係があるだけで、グループが分かれていても、客引き同士は友好的だという。
だが、この組織内の「緩やかな連帯」と組織間の「友好的」関係が、悪質なボッタクリの元凶になっている。A氏が続ける。「客をだます時には必ず他のポン引きとチームを組みます。他グループの人間でもかまわない。なぜなら、チームでだまし取った金は個人に分配されるので、1人で行うより効率的なんです」
では、この悪質なポン引きたちによる「チームプレイ」とはいかなるものなのか。最も代表的な手口をA氏に聞いた。
「まず、Xが客に声をかける。『ヌキですか? どんなコがお好みですか?』と誘って、『若いコがいい』と酔客が答えたら、しめたものです。『こんな時間ですから、店の人を直接、紹介します』と言って、レンタルルームに案内します。この時点で客はレンタルルームに6000円ほどの料金を支払うのですが、この料金にはポン引きへのキックバック分が含まれています」
程なくして、客の前にはXに代わり「店の人」が現れるという。
「もちろん、風俗店の店員なわけがなく、ポン引きであるYなのです。そこで、『プレイ料金は女性にお支払いください。ただ特別な女性なので保証金を‥‥』と、数千円の保証金をだまし取ります。数分後に現れるのは、客が望んだ『若い娘』ではなく、とんでもないババアなのです」(A氏)
もちろん客もだまされたことに気づくが、被害は少額である。泣く泣く「ババア」と一戦交えて、黙って帰路につく男が多数だという。
「女が現れるのは、まだいいほうで、そのままトンズラしてしまうヤカラもいます。こうした詐欺を何十回と繰り返しても、客引きの人数が多すぎて、誰が主犯かつかみきれない。仲間内で情報を共有し合うので、引っ掛かる客は後を絶たないのです」(A氏)
他にも、未成年との乱交パーティを匂わせて大金をせしめる詐欺なども横行しているという。
「お兄さん、今日はヌキですか?」
歌舞伎町でこう声をかけられたら、まずは警戒したほうがよさそうだ。